エロとは言えない気がしますが、そういう描写が出てきます
むしろヤンデレ注意?
古泉はいつものような笑みを浮かべながら、キョンの前にコーヒーを置いた。 「わざわざお呼び立てしてしまってすみません」 「全くだな」 不機嫌にキョンが言っても、古泉は笑みを少し困ったように歪めただけだった。 「俺に何の用だ? 悠長にコーヒーなんて飲んでていいのかよ」 「ええ。なんと言いましょうか…。僕が、個人的に、あなたに相談したいことがあっただけのことですので」 「お前が? 俺に? 相談?」 解せない、と言わんばかりの表情で呟きながら、キョンはコーヒーカップを手にした。 「どんな相談か、興味があるな」 「あなたが僕に興味をもってくださったというそれだけでも、僕は光栄に思うべきでしょうね」 「なんだそりゃ」 笑いながらキョンがコーヒーに口をつけた。 「で、相談ってのはなんだ?」 「そうですね…」 と古泉は考え込み、 「ちゃんと考えてはいたはずなのですが、あらためて口にするのはやっぱり難しいですね」 と苦笑した。 それからしばらく黙り込んだ古泉は、唐突に言った。 「叶うことのない恋をしたら、あなたならどうしますか?」 「恋? お前、好きな相手でも出来たのか?」 驚いているのか困惑しているのか分からない表情でそう言ったキョンに、古泉は苦笑を浮かべた。 「好きな人が出来たのはもう随分前のことです。そうですね……ゴールデンウィークが終った頃でしたか」 「本当に前だな。もう冬だぞ」 「なにしろ、叶う見込みもないものですから、忘れるしかないと思ったんですけどね。それも、出来ませんでした。決意なんて、脆いものです」 「そんなに…好きなのか」 「ええ。この世界を失ってもいいと思うほど」 「そう……か」 「口汚く罵られても、嫌われてもいいんです。その人が、僕のことだけを考えていてくれるなら」 「……」 俯きながら、キョンはテーブルにカップを戻した。 中身は半分ほど残っている。 「その人が他の人に笑い掛けるだけで許せなくて、そのくせ自分では何もしてはいけないことが嫌だったんです。でも――もう、我慢するのはやめにします」 古泉はキョンの顔をのぞきこむようにして尋ねた。 「あなたは、涼宮さんのことをどう思っているのですか?」 「俺は……」 どこかぼうっとした目で古泉を見つめ返しながら、キョンは答える。 「ハルヒのことは別にどうとも思ってない。SOS団の団長と団員ってだけだ。だから、お前の邪魔には…」 「本当ですね?」 皆まで言わせず、問い掛けた古泉に、キョンは頷く。 その強硬さを、古泉らしくないと思いながら。 本当に聞きたいことは別にあるんじゃないか。 そう口を開きかけたが、それはあくびに変わった。 まぶたが重い。 「なんか……眠…い……」 「眠ってしまって構いませんよ。こんな時間帯に呼びつけてしまった僕がいけないんですから」 「こんな時間って……まだ、夕方だろ…」 言い返しながらも、キョンは堪えかねたように目を閉じた。 古泉は苦しげに唇を歪め、 「…愛してます。あなたのことを、何よりも、愛してます。あなたはおそらく……涼宮さんのことが好きなのでしょうけれど」 呟きながら、眠っているキョンに口付けた。 脳裏に思い描くのは、最近、以前にもまして親しくなっていたキョンとハルヒの姿。 二人が親しくなるにつれ、見限られたかのように、古泉とキョンの間は開いていった。 「あなたが、いけないんですよ」 と古泉は呟く。 「僕を見捨てるなら、徹底的にそうしてしまえばいいのに、中途半端に突き放すから」 だから、諦めることも出来なくなってしまった。 ゲームをしたり他愛もない話をする時の笑顔に魅せられて、その笑顔が他の誰にでも振りまかれることに絶望した。 自分だけに与えられるものが欲しくてたまらなくなった。 「だから、」 と、その先は口にも出来なかった。 そうして古泉は、壊れやすく繊細な人形でも扱うかのようにキョンの身体を抱き上げる。 運ぶ先は、寝室だ。 慎重に、そろりとベッドに下ろしたキョンへ、古泉はもう一度キスを落とした。 「ごめんなさい。…愛してます……」 それ以外の言葉を忘れたかのように繰り返しながら、キョンの服を脱がせていく。 体つきも何も、平均的でしかないだろうその身体に、欲情の色を見せながら。 露わになった下肢へそっと唇を落とし、両方の手首を幅の広い布でベッドに縛りつける。 動作のひとつひとつは緩慢で、迷っているかのようだ。 あるいは、この後ろめたい行為を味わっているのかもしれない。 その言葉に嘘がないことを表すかのように、古泉はキョンの身体を気遣う様子を見せた。 手首を拘束する布の幅も、体重を掛けないように伸し掛かっていることも、その現れだろう。 しかし、やっていることはと言えば、屍姦めいた強姦行為だ。 死んだように眠り、身動ぎひとつしないキョンの身体に触れて、ひとり情欲を募らせる姿は、どんな獣より浅ましい。 それと分かっていながらも止められないのか、古泉は苦しみと悦びの入り乱れた表情を浮かべていた。 愛撫されるためにあるのではないだろう、胸のふたつの突起に代わる代わる口付けて、舌先で転がす。 ぷくりと勃ちあがったそれに、笑みさえ浮かべながら歯を立てる。 充血し、赤くなったそれに負けぬほど赤い鬱血の痕を、その周辺に散りばめながら。 日常的に日に当たらないからか、白く滑らかな肌を愛で、舌で味わう。 「んぅ…」 くすぐったさにかキョンが声を上げるたびに、怯えるような表情を見せるくせに、止められないのか、古泉の行為は次第に大胆さを増していく。 それは、古泉がコーヒーに混ぜて飲ませた睡眠薬が効いているために、キョンが目を覚まさないからこその大胆さに思われた。 そうでなければおそらく、古泉はキョンの指に触れることさえ出来なかっただろう。 嫌われ、罵られる覚悟を決めたはずなのに、それさえも脆く揺らいでしまうことを自ら嘲笑いながら、古泉はキョンの陰茎に触れた。 緩く扱きあげてそれを勃たせると、それに舌を這わせた。 その直前に一瞬見せた躊躇いは、その行為への躊躇いではなく、キョンが起きないかを警戒するだけのものだったのだろう。 古泉は、まるでそれがこの世で至上の美味であるかのように舐め上げ、先端から溢れる雫をすすった。 その度にキョンの身体がびくりと震えるのへ、最初は警戒を見せていた古泉だったが、飲ませた睡眠薬がかなり強力なもので、ちょっとやそっとの刺激ではキョンが目を覚まさないことを、やっと感情でも理解したらしい。 キョンが白濁を吐き出すまで、それを貪った。 飛び散った飛沫のひとつさえ残さず舐め取り、すすって、それでやっと喉の渇きが癒えたかのように、小さく満足げに微笑んだ。 しかし、喉が潤されたところで空腹までは満たされないのと同じように、それではまだ不満であったらしく、古泉はだらりと力の抜けたキョンの足を軽く立てさせ、その間にある小さなすぼまりを見つめた。 一度目を向けたサイドボードの上にあるのは、用意してあったローションのようだった。 しかし、古泉はそれを使おうとはせず、そこへ口付けた。 そこを解すということ以上に、それをする意味があるかのように。 空虚なまでに静まり返った部屋の中を満たすのは、淫猥な水音と、時折上がる苦しげな吐息だけだった。 指と舌で柔らかく解したそこへ、自らの怒張したモノを押し当てる古泉の目に宿るのは、狂気としか言いようのないほど暗く、そのくせ熱を持った光。 もう一度キョンの唇へキスをして、その耳元で熱っぽく愛を囁いて、古泉はそれまで堪えていた分を取り戻すかのように乱暴な動きで、キョンを貫いた。 それがかなりの痛みを伴ったのか、 「――っ!」 キョンの喉から引き絞られるような悲鳴が上がった。 遅れて、その目が見開かれる。 「な…っ!? こ、いずみ…!?」 信じられない、とでも言いたいのか、それとも状況さえ分からないのか、呆然とそう呟いたキョンに何も告げず、古泉は乱暴に腰を使った。 「ひぃ…っ、ぅ、んあぁっ…!」 キョンが喘ぎ声とも悲鳴ともつかない声を上げる。 感じているのが痛みだけではない証拠に、一度は痛みに萎えたはずのキョンのモノは再び勃ち上がってきている。 「ぃや、めろ…! こんなのは、嫌だ…っ」 本気で嫌がっているからなのか、それとも生理的なものなのか、キョンの眦から涙がぼろぼろとこぼれ落ちていく。 それを舐めとる古泉の舌は優しいのに、行為は身体ばかりか心まで引き裂かれるかのようで、そのギャップに、キョンは戸惑い、瞳を揺らがせた。 その戸惑いさえ、叩き付けられる快感と痛みに飲み込まれて、消えていった。 そうして繰り返された、何度目とも知れぬ交合の果てに、ふっつりと意識を失ったキョンの身体を、古泉は愛おしげに抱え上げた。 抱え上げた脚の間でだらしなく口を開いたままの部分から、白く滑った液体が漏れ、キョンの身体を伝い落ちていった。 二人分の白濁にまみれ、白い肌が一目でそれと分かる鬱血の痕だらけになっていても、古泉はその身体を美しいと思わずにはいられない。 意識のない口の端にこびりついているのは、無理矢理に咥えさせたものから吐き出した自分の精。 こうして犯して、貶めてしまえば諦められると思ったのに、愛しさは募るばかりだ。 無理矢理に陵辱して、汚辱にまみれた姿を見れば、幻滅出来るかもしれないと思っていたはずなのに、と古泉は薄く嗤った。 「愛してますよ」 言いながら、短い髪にこびりつき、すでに乾き始めている白へと口付ける。 「あなただけを」 囁きながら耳朶を味わう。 「この世界よりも、愛してます」 そう言って、楽しげにキョンの唇へキスをした。 運び込んだバスルームでは、倒れないようにと浴槽にもたれかからせるような形で、キョンの身体を慎重に下ろす。 古泉は他にも細々とした優しさすら見せながら、自分が穢れさせたキョンの身体を洗い清めた。 自分が注ぎ込んだ精さえ、掻き出して。 そうしてすっかりきれいにしてしまうと、風呂から上がり、柔らかなタオルで水気を拭きとる。 元の通り服を着せて、情交の痕跡も露わなベッドにではなく、いつもと変わりのないソファにキョンの体を横たえた。 休み明けの月曜、キョンがいつものように放課後の部室に行くと、古泉がパイプ椅子に腰掛けていた。 チェスを広げているのも、 「こんにちは」 と言うのも、いつもとなんら変わらない。 キョンは何も言わずにただ顔を顰め、古泉に背を向けると、急ぎ足で出て行った。 「キョンくん、どうしたんでしょう…」 首を傾げるみくるの声を聞いているのかいないのか、古泉は酷薄な笑みを浮かべ、胸の内で独りごちた。 ――僕を見た時だけでもいいんです。 僕のことだけを考えてください。 いつも僕が、あなたのことしか考えられないのと同じように。 ……愛してます。 キョンが古泉と距離を取り、ハルヒと親しくするようになった本当の理由を知ろうとする気持ちさえ、病んだ心の奥に沈めて。 |