一応エロです
リアリティは割と無視の方向でお願いします(いつものこと
















































ラブメール



殿下に付き添って出張、というのは珍しいことでもないのだけれど、家に彼をひとり残してのそれは、なんだかとても長く不安でつまらないものに思える。
仕事をしている間はまだいい。
けれど、仕事を終えて、あてがわれた部屋に戻ると、胸に隙間でも空いたような感覚に囚われ、今すぐにでも帰りたくなる。
帰りたいけれど、それは出来ないくらい遠くにいる。
度重なる技術革新の賜物で、何光年、何十光年、何百光年なんて彼方まで、ウラシマ効果やその他の厄介な障害を気にすることなく移動出来るようになったのは素晴らしいことだ。
けれど、そんな風に容易く移動出来ることにならなければ、こうしてたかだか出張で、そんなにも遠く隔てたところに行く破目にもならずに済んだだろうに。
これだけ離れてしまうと、音声通信は少しばかり難しくなる。
音声を一度別なものに置き換えて通信し、再変換という手順を踏むのは恐ろしく旧式の電話とさして変わらないのだけれど、距離がある分だけタイムラグが酷くなるのだ。
だから専ら、文章でやりとりすることになる。
それでも、よっぽどの緊急回線を使うとかそういことでもなければ、かなりのタイムラグにやきもきさせられるのだけれど。
仕方ないと諦めてシャワーを浴び、もう寝てしまおうと思ったところで、メールが届いたのに気がついた。
それは、仕事のメールでもなければ殿下からの急な呼び出しでもない。
誰より愛しい彼からのメールだった。
何か遭ったのだろうかと思いながら開いたメールは、
『よう』
といつもながらの軽い挨拶から始まっていた。
『そろそろ仕事は終ったか? もう寝ちまうところかとは思ったんだが、少しでもお前と話したくてメールした。途中で寝ちまっても文句は言わないから、少しだけ付き合ってくれんか? だめならだめで、眠いと一言送ってくれりゃ、俺は満足だ』
なんて言われて、放っておけるはずがない。
僕はつい口元が緩むのを感じながら、返事を書いた。
『こんばんは。今日の仕事は終りました。至って順調ですので、予定通りに帰れると思います。それまで寂しい思いをさせてしまうとは思いますが、我慢してくださいね。寂しいのは、僕も同じですから』
早く返事を届けたくて、長々と文を書き連ねることなく、短いメールを送る。
しかし、これが届いて、そうして彼から返事が来るまでにどれくらい時間が掛かるのかと思うと、本当にこの距離が恨めしい。
とりあえずコーヒーでも飲もうか、と思いながら席を立つと、驚いたことに着信が告げられた。
「え……?」
戸惑いながらもメールを開けば、間違いなく彼からのもので、それも先ほど僕が送ったメールへの返信に違いなかった。
『寂しがってくれてるなら、嬉しいな。俺も、寂しい。早くお前に会いたいし、お前に触れたい。……まだ三日も経ってないのにな』
『全くですね。……ところで、一体どういう魔法を使ったんです? 返信が、いえ、通信速度があまりにも速すぎるように思うのですが』
そう尋ねれば、やはり返事はすぐに来た。
『緊急回線をこっそり使わせてもらった。なに、本当に緊急の時にはちゃんとお返しするさ』
悪びれもしない、彼らしいメールに僕は苦笑する。
『気をつけてくださいよ?』
『大丈夫だ。ばれないようにうまくやるし、たとえばれたって、少々なんとかなるくらいには、俺も『仕事』をさせてもらってるからな』
にやりと笑った顔が見えそうだ、と思いながら、
『では、どんなことを話しても平気なんでしょうか?』
と問う。
『ああ。……何か話したいことでもあるのか?』
『話したい…といいますか、やってみたいことなら』
書いている間はともかく、返事を待つ間に、少しばかり冷めてきた頭がやめておけと警鐘を鳴らすのだけれど、
『俺もしたいことがあるな。…お前に触って欲しい』
と僕の考えを読んだようなことを言われると、頭どころか体中が熱くなる。
『僕も、あなたに触れたいです。今、どこにいらっしゃるんですか?』
『お前の部屋のお前のベッドの上。すぐ寝れる格好でごろごろしてた』
『それはまた、無防備ですね。そんなこと、よくしてるんですか?』
『してる、って言ったら?』
蠱惑的な笑みが見えそうな言葉に、僕は小さく笑った。
ただ、彼のメールはそこで終りではなく、
『まあ、実際してる訳だが。……お前が俺のことを放って行くから悪いんだ。文句言うなよ』
と付け加えてあったけれど、
『怒ったりしませんよ。…むしろ、嬉しいです』
と書いて送ろうとして、
『好きです』
と書き加える。
彼の返事は、
『俺も好きだから、しよう。もうこれだけで熱いんだ。服、脱がせてくれ』
というものだった。
『脱ぎたいですか?』
『ん、脱ぎたい。脱がせて?』
そうねだられて、僕は少しだけ意地悪をしてみたいような気分になって、
『だめです。脱がないで着たまま…そうですね、少し、めくってみましょうか』
『もどかしいことすんなよ……』
文句を言いながらも、
『めくったから、触れ、ばかっ』
なんて返事が来るから、彼は本当に可愛い。
今頃、興奮に少しだけ顔を赤くして、でもどこか不機嫌そうにしているんだろうと思うと、それだけでこちらも煽られる。
『きちんと、胸の上までめくったんでしょうね。ちゃんとめくってるなら、触ってあげますよ。あなたの可愛らしい乳首にも、あなたが触られると身を捩らせる脇腹も全部』
『…っ、ん、あっ……ぞくぞくする……。もっと、しっかり触れよ…』
彼のあの甘い声音を思わせる調子で書かれた文字は、確実に僕の脳内で音声を再生させた。
艶かしくて、そのくせ恥らっているような、あの囁き。
吐息の温度さえ感じられそうだ。
『いいですよ。片方の乳首を徹底的に可愛がってあげますね。最初は触れるだけで、それから押し潰して、爪を立てて、引っ張って……』
『ひ、ぁ…っ、や、だ……。足りんから、反対も、して……』
『反対も同じようにしたんでいいんですか?』
『反対は、舐めて、かじって、吸って……』
いやらしく言葉でねだる彼、というのは珍しいかも知れない。
何せ彼は、そんな風にするよりは強引に伸し掛かるかどうかする方が好きなのだから。
どうせなら、普段出来ないことをしたいと思った僕は、
『まだだめです。代わりにキスしてあげますから』
と意地悪く彼を焦らす。
『意地悪…』
文句を言いながらも僕の指示に従ってくれているらしい彼をなだめすかし、しばらくそうして弄んでいると、やけに容量の大きいメールが届いた。
何事だろうか。
怒ってウィルスでも添付した、なんてことはないと思いたいが、ないとも言い切れないのが恐ろしい。
怖々開いた僕は、驚きに目を見開く破目になった。
「な…っ……」
そこには、
『もう、こんななっちまってるんだから、脱がせて、触って』
という言葉と共に、数枚の写真が添付されていた。
真っ赤に色付いて震えている乳首の写真に、薄いズボンの下で頭をもたげたものの形や染み出した先走りさえ分かるような写真、トドメは熱を帯びて潤んだ瞳でこちらを睨みつけた写真だった。
「……これは、反則でしょう…」
顔を真っ赤にしながら、頭を抱え込む。
視覚情報がない分有利だと思ってたのに、それを見抜かれたんだろうか。
『あなたには負けましたよ。……乳首を舐めたりかじったりしながら、下も可愛がってあげますから、機嫌を直してください』
『見たら消せよ。流石に恥かしい。 …っ、ん、下、脱がせろ……! 直接触れっ…』
『保存しましたので、安心してください。 このまま服の上から、というのも好きなんですけどね。あなたがそう仰るなら仕方ありません。膝までズボンを下ろしたら、直接扱いてあげますよ』
『あほか! 消せ! あ…っ、ぁ、んんっ…古泉……そこだけじゃ、足りないから……』
通常の会話と並行して、いやらしい文言が続くというのも不思議な感じだと思いつつも、意外と器用に切り替えられるもので、冷めることもない。
あるいはそれは、彼にあまりにも煽られているというだけのことなのかもしれないけれど。
『消しません。大事にしますね。 足りません? …では、膝を立てて、脚を開いてくれますか? ……ああ、あなたのことですから、言われる前にそうしてしまっているでしょうか?』
『ばか……。 ん…してた……。なのに、お前が触ってくれないから……』
『我慢しててくれたんですよね。…ありがとうございます。愛してます。いっぱいあなたにキスがしたいです』
『ふあ…っ、ぁ、あんま、前、強くするなよ…? 先に一人なんて、いやだからな……。早く、後ろ、ほぐして……お前の…入れて……。 キス、俺もしたい…いっぱい、して……』
『時間を掛けてほぐさなければいけないくらい、締まっちゃってますか? それとも、もうとろとろになってたりします? ええ、いっぱいキスしましょうね』
『んん…っ、分からん…。指くら、い、すぐ入っちまいそう…。 んっ、う……ふ…っ、ぁ……キス…気持ちいい…』
そんな風に言われると、唇にも手にも彼の感触が蘇ってくる。
気のせいか呼吸が荒くなってくるのを感じながら、
『乱暴にされたいですか? それとも、優しくして欲しいです? 僕も、気持ちいいですよ…。あなたの唇も舌も……』
『どっちでも、いい…。お前にされるなら、どっちでも気持ちいいし嬉しい……。あ、でも、あんま焦らすなよ…? …ただキスするだけでもこんな気持ちいいとか、お前だけだからな』
『…そんなこと言われたら、酷くなんて言えませんよ。…指、入れていいですよね? …本当ですか?』
『あ、ん、早く……! こんな嘘吐いてどうするんだよ……。最初から、お前とのキスは触れるだけでも気持ちよくて、どうしようもない…』
思いがけない言葉に嬉しくて堪らなくなる。
『…どうしましょうか、嬉しすぎて、我慢出来なくなりそうです。優しくしたいのに……。 嬉しいです。本当に……なんと言ったらいいのか分からないほど……』
『じゃ、あ、乱暴になったっていい…。それでも、お前がどう思ってくれてるかなんて分かるからな。好きに、けだものにでもなんでもなっちまえ』
『じゃあ…すみません、とにかくほぐさせてください。早くあなたの中に入りたいです』
『んっ、ぁ、もっと……好きにしていいから……』
『ローション、あります? ないなら、取ってきて…』
『ある、だいじょうぶだから、はやく』
変換する余裕すらなくなったのか、そんなメールが返って来た。
その頃には僕も余裕なんてなくて、きつくなってきたズボンを寛げ、自分のものを取り出す。
触れてなかったのに、酷く滑っていて、どうしようもない。
『僕も、あなたのことが好きで、あなたに煽られて、どうしようもありませんよ。…触ってもなかったのに、勃ってしまいました。こんなにぬるついていて……ローションなんていらなかったかも知れませんね。押し当てて…谷間に擦りつけていいですよね…しますから……』
『嬉しい…、なあ、もっと、して……。はやく、いれて…ほしいから』
『僕も、早くあなたに触れたい。あなたの一番熱い場所に触れたいです…』
『ん、もう、いいから、入れろって……』
『ええ…痛んだら、ごめんなさい……』
『あ…っ、ん、はいってくる……う……』
彼の締め付けを思い出しながら、痛いほどに自分のものを握り、ゆっくりと手を動かす。
『あなたの中、気持ちいいです……』
『おれも、きもちいい。もっと、なあ、はげしくしていいから』
『あなたの好きな奥まで、いっぱい突き上げてあげますよ』
『あ、そう、して…。気持ちいい…っ、古泉、こいずみ、好き……』
『僕も好きです。愛してます。あなたが好きです』
『んっ、ぁ、や…! もう、いく、出るからぁ!』
『僕もです…。一緒に……』
早いと思うかも知れないけれど、メールの分、タイムラグは大きく、その間中手を止めることさえできなかったのは僕だけではないはずだ。
『ん、う、……っああ…! …はぁ……』
『う……っ、あ……。…ああ、疲れましたね…』
手の平を白濁で汚し、それを近くにあったティッシュで拭き取っておいて、そう打ち込んだ僕はぐったりとベッドに横たわった。
気がつけば、もう随分遅い時間だ。
眠らなくてはと思うのに、名残惜しくて眠れない。
『疲れたけど、気持ちよかった。案外いけるな。……ほら、お前はそろそろ寝ちまえ。明日も忙しいんだろ』
『名残惜しいです。もう少しだけ話していてもいいでしょう?』
『だめだ。俺も眠い。寝るぞ。キスしてやるから寝ろ。おやすみ』
そんな風に言ってくれる彼の優しさも愛しい。
僕は小さく笑って、
『はい、おやすみなさい。……帰るのがますます楽しみになりましたよ』
と送って目を閉じた。