蛇足のエロ文ですよ
しかもぬるくてすみません




















































力試し運試し 4



生憎、俺が思ったよりもその楽しみの訪れは遅くなっちまった。
模擬戦、とはいえ勝てると思わなかった奴等に勝てた喜びもあり、戦勝祝いのパーティーはハルヒの指示の下盛大に行われたからだ。
ハルヒはよく心得たもので、最初にちらっと挨拶をした後は、とっとと引っ込んじまった。
こういう時に、上司が偉そうにずっといたって場が盛り上がらないだけだと分かっているのか、それとも自分が盛り上がれないままほかの連中が騒いでるのをみるだけが嫌なのかはよく分からんが。
当然、古泉はハルヒに付き従って下がっちまい、俺もそれを追いかけようかと思ったのだが、国木田にとっ捕まり、
「今回の作戦はキョンが立てたんだって?」
などと聞こえよがしに言われたせいで、あっという間に囲まれちまった。
よくやってくれたとか素晴らしいとか口々に褒められるのも、実際惜しみない賞賛の眼差しを向けられるのは悪い気分じゃなかったので、ついずるずると引き止められるまま話し、勧められるまま飲んだ。
こういうのは本当に久しぶりで、ここまで盛大に褒められ、祝われたのは初めてだった。
前にあったのも、士官学校での訓練の慰労会とか卒業パーティーとかそういう時だったか。
あの時はそんな風に俺が褒められたりするなんて生まれて初めてのことで大いに戸惑ったものだ。
軍に入ってからは所属した部隊が部隊だったので、こんな風に祝うようなこともなく、むしろその方が気が楽だとさえ思っていたのだが、久しぶりにこんな目に遭うと、なにやらむず痒くなる。
だが、それだって悪くはない。
自分が昔よりは「普通」になれたように思える。
実際、どの程度そうなれたのかはよく分からんが。
そんな調子で飲んでいたからか、俺は徐々に酔いが回り、それでもまだ、これ以上はまずいということを理解できる程度の状態でパーティー会場を後にした。
決して弱いはずはないのだが、機嫌よく、かつ仕事でなく飲んだからだろうなと分析しながらタクシーを捕まえ、家の裏まで行ってもらう。
表に行かないのは、俺と古泉が一緒に暮らしていることが一応秘密になっているからであり、裏は住所も違うし建物も違うことになっている。
よく調べれば俺と古泉が背中合わせに住んでいるということに気付く奴はいるだろうが、中が一緒だということまで気付く奴はそう居はしないだろう。
俺は自分の家ということになっている裏口の鍵を開けて中に入り、そのまま真っ直ぐ進む。
真正面の壁に手をかざすと、それは一瞬で消え失せた。
現れるのは古泉の家ということになっているスペースのリビングだ。
そこのソファで寛いでいた古泉は、俺を見て柔らかく微笑んでくれた。
仕事中は見れないそれが、妙に嬉しくなって駆け寄れば、
「酔ってるんでしょう? 無理してはいけませんよ」
と立ち上がった古泉に優しく抱き止められる。
「ただいま…」
「お帰りなさい」
ちゅっと恥かしい音を立ててキスされる。
それだけで気持ちいいんだが、
「ん…っ、古泉…酒臭いから……」
「気にしませんよ」
「俺が…、気にする…。ん、あ……」
「まだオアズケですか?」
そんなことを言いながら、古泉は俺の背中を撫で、腰を撫で下ろし、更にその下の、女の子に比べれば肉付きが薄いものの、柔らかな膨らみをいくらか荒っぽく揉んだ。
そうされるだけで、その奥に隠された場所がひくつき、震えるような気がして、ぞくぞくする。
「や…っ、ん、古泉……」
「嫌と言われるとかえってしたくなるのはどうしてなんでしょうね?」
悠長な声で言っているが、その手は止まらず、指が生地越しに溝を撫で、その奥の窄まりを遠回しに刺激してくる。
「ひぁ……! あ、や……っ、だ、古泉……やだ…」
「あなたがこんな風に拒むなんて、もしかして初めてじゃありませんか?」
揶揄するように言われても、酔って制御のきかない体を何とか支え、古泉に縋りつくのがやっとな俺は、何も言い返せない。
駄々をこねる子供のようにやだやだを繰り返しながら、古泉の服にぎゅっとしがみつくばかりだ。
古泉はかすかに声を立てて笑いながら、俺の頬に口付けを落とし、
「…ねえ、本当にだめですか?」
と聞いてくる。
だめじゃない、と言いそうになるのを堪えて、
「せめて…シャワー浴びさせろ……」
と唸れば、古泉は大人しく手を離してくれるかと思いきや、
「畏まりました」
と言ってそのまま俺を横抱きに抱えあげた。
「ちょっ…! こ、古泉!?」
「久々に、いいでしょう?」
何がいいっつうんだ、と聞き返す前に、古泉の足が風呂場へと向かう。
「あなたと一緒に入るのも久しぶりですよね。昔はよく入ったのに、帰ってきてからはそんなこともなくて」
「それは、風呂に入る余裕もないくらいべたべたしてたからだろ…。俺が気を失ってる間に風呂に放り込んだことはあるくせに」
「ふふ…じゃあ、今日はそれだけじゃ済まなくてもいいですよね」
何がじゃあなんだか、と思うが、ああもう、負けた。
「お前がそこまで欲しがるなんて珍しいからな。…好きにしろよ」
「ありがとうございます」
慇懃に言って古泉は風呂場に入り、俺を床の上に下ろしたものの、抱き締めたまま離さない。
「古泉……?」
「…ああ……すみません、離れないと脱がせられない、とは思うんですけどね、」
離れ難くて、と呟いた声は酷く艶っぽい。
「…どうかしたのか?」
その顔がどこか寂しそうに見えて、俺はそろりと手を伸ばし、しょんぼりしたその頭を撫でた。
「……一度、パーティー会場に戻ったんです」
ぽそりと古泉は言った。
その声や顔に滲むのは、寂しさや嫉妬、喜びに悲しみなんて、非常に複雑なものだ。
それらが揺れ動き、浮かんでは消え、消えてはまたむすぶのを、俺はじっと見つめた。
古泉が俺のことでそんな風に心を揺れ動かすということが、古泉には悪いが、俺にとっては嬉しいことであり、愛されてると実感してはくすぐったくもなる瞬間なのだ。
「戻ったら……あなたが、大勢の人に囲まれて楽しそうにしているのが見えて……、それが嬉しいとも思うのに、悔しくも悲しくもなって……そんな風に妬いてしまう自分の狭量さが嫌になりもして…」
泣きそうに呟く古泉を、俺はきつく抱き締める。
「俺は嬉しい」
「……」
「お前がそこまで思ってくれて、嬉しい」
そう言って口付けると、古泉は一粒だけ涙を零し、
「…好き、です」
「ん、俺も好きだ」
なあ、と俺は古泉を呼ぶ。
「…服……濡らしちまってもいいよな…?」
「……大丈夫だとは思いますけど……?」
「ん、じゃあもうこのまま入っちまうぞ。服脱ぐ間も惜しいのは、お互い様だろ?」
言いながら古泉の体を引き寄せるようにして動き出す。
いつでも適温に保たれた綺麗な湯にそろりと足をつけ、服が濡れるのも構わずざぶりと湯船に浸かった。
古泉を押し倒すようにして湯船に座らせ、俺はその上に腰を下ろす。
「…本当に、お前と風呂なんて久しぶりだな」
「でしょう?」
「……寂しがらせて悪かったな」
ぎゅうと音でもしそうな調子で古泉の首に抱きつき、ちゅっとキスをする。
「これからは、もっとくっついてるか?」
「…可能な限り…引っ付いていたいです」
子供みたいなことを言う古泉を可愛いと思うようになるなんて、昔の俺は思っただろうか。
そんなことを古泉が言ってくれることさえ想像しなかったんじゃないだろうか。
古泉と出会ったばかりの頃の俺と言えば、古泉のことを本当に、王子様だかなんだかみたいに思ってたし、古泉も俺の期待に応えようとしてか、かっこよく振舞ったりもしてたからな。
それにしては、あれこれ可愛い失敗もしてはいたし、取り乱すこともあったんだが、それでも今とはやっぱり違うと思った。
古泉の態度も、俺の受け止め方も。
「休暇、何日だっけ?」
「およそ一週間…ですね」
「その間にハルヒの呼び出しくらいはありそうだが…たっぷりあるな」
「ええ」
「……じゃあ、その間中、離してやらないから、覚悟しとけ」
とりあえずは、この酒臭いのを落としたいな。
他の人間の匂いもついてそうだ。
「…ついてますよ」
そう言って古泉は片手で湯をすくい、俺の頭にかける。
とはいっても、片手だから大した量にはならない。
「ちょっと離してくれたら、自分でざっと洗うんだが……」
「…離してあげられません」
「……困った奴」
くすくす笑いながら、俺は古泉の手を自分の肩に移動させ、
「離れたくないなら、そこでも掴んでろ」
と言って、そのままざぶりと湯に潜った。
古泉の上にいるせいで余計に浅く、深さはないのだが、それでも頭くらいは沈む。
ついでに、と手を伸ばして、古泉の腰に一度抱きつくと、驚いたようにそこが震えた。
調子に乗ってシャツをめくり上げ、素肌に吸い付くと、なにやら抗議する声が聞こえたような気もしたが、よく聞こえないので無視した。
息が苦しくなるぎりぎりまでそんなことをしておいて、ざばっとしぶきを上げて顔を出すと、湯のせいでなく、顔を赤くした古泉がいた。
「本当に…あなたって人は……」
「これくらいの方が、俺らしくていいだろ?」
「…さっきあれだけやだやだ言ったのはなんだったんですか……」
「久しぶりなのに酒の匂いやら汗の匂いやらぷんぷんさせた状態でってのは避けたいっていうだけだ」
だから、と俺は古泉の拘束が緩んだのをいいことに、びしょびしょに濡れた白い上着もシャツも脱ぎ捨て、部屋の隅へと投げ込んだ。
これで勝手にクリーニングしてくれるってのは全く便利でありがたいもんだな。
おかげで何も気にせず、したいことに集中出来るんだしな。
俺は古泉と体を密着させて、
「なあ、まだ匂うか?」
と尋ねる。
「…かすかに……ですが」
「じゃあ、お前の匂いつけてくれ…」
言いながら口付ける。
息はまだ酒臭いから、と躊躇わないでもなかったが、それ以上にキスしたかった。
唇を撫でて、白い歯をなぞり、つるつるした感触を味わいながら、甘い唾液をすする。
「ふ……ぁ、んっ」
「…ん……はぁ…」
吐息も喘ぎも思いも何もかもを交換するように、求めるように、口付け、貪りあう。
もっととは言わないし、言われない。
言われなくてもお互い欲しがっていたし、そうだと分かったから言わなかった。
ぐちゅぐちゅとかずずっとか、決して綺麗ではない音を立てながら貪りあう俺たちだって、綺麗ではないだろう。
それでもいいし、むしろそれくらい本気で欲しがる相手がいることは幸いだろう。
古泉の手がいつのまにか俺の胸に伸び、くすぐってくる。
ちょっと触れるだけでも堪らなく気持ちいいそれが、明確にそうしようとして触れてくるのだから、気持ちよくないはずがない。
「ふあ…っ、は……あんっ…」
声を上げ、体を震わせ、きつくしがみつきながら更に求める。
おかしくなりそうなほど気持ちよくなりたい。
古泉は俺を更に抱き寄せ、互いの胸が触れ合うほど密着させたかと思うと、俺の背中を撫で下ろし、そのままずるりと俺のズボンも下着も脱がせた。
「あ…ちょ……っ…」
性急な行動に驚く俺には答えず、先ほどズボンの上から刺激してきた部分にダイレクトに触れてきた。
「ひゃっ…!?」
「…いい、ですよね」
「あっ、ぁ、が、っつきすぎ、だろ…!」
「オアズケされて、辛かったんですよ」
「どうせ、艦内じゃなかなか出来んだろうが…」
それこそ、休憩時間なんかにこっそり忍び込んでだとか、休暇にわざわざ艦を移動してってはなしになっちまう。
「あー…せめて、お前と一緒の艦に乗れたらな……」
「その件ですが、」
と古泉は一瞬だけ司令としての顔に戻って言った。
「今回の功労者であるあなたには、なんらかの褒美を、と殿下はお考えのようですよ。まだ決まってはないようですが」
「…だったら、この休暇の間にねだりに行くか。お前と同じ艦に乗りたい、とでも」
俺が言うと、古泉は迷いながら眉を寄せ、
「…その、『お前』、というのは誰のことなんでしょうね。僕でしょうか? それとも……」
「…ばーか。お前以外なんてどうでもいいに決まってんだろ」
そう笑い飛ばして、俺は古泉にキスをする。
「そりゃ、ハルヒのことは重要だとは思ってるが、それだって、お前が大事にしてるからだ。そうじゃなかったら、皇女殿下だろうがなんだろうが俺には関係ないな」
偽悪的に囁いて、俺はもう一つ付け加える。
「俺にとってはお前が全てなんだ」
「…キョンくん……」
嬉しいけれどそれでいいのかと躊躇う顔をする古泉に、俺ははっきりと笑ってやる。
「…愛してる」
「……僕も……あなたが好きです。あなたのことだけを…愛してます…」
「じゃあ…態度で示せよ」
意地悪く言って、俺はそのまま古泉を食いにかかってやった。