自慰ネタで微エロです
苦手な人はバックプリーズ!

















































お留守番



配属待ちの身はなかなか退屈なものである。
おまけに俺はこの三年間と言うものろくに休みも取っていなかったため、その分もと過剰なまでにたっぷりと休暇をもらっちまった。
こんなに要らないってのにな。
それがもし、古泉の地上勤務だとか休暇だとかと重なってたらいいのに、そうもいかず、長い留守にも関わらずメンテナンスの行き届いた我が家で、俺はぼんやりと古泉の帰りを待つ破目になった。
掃除だとかなんだとかやることがありゃまだよかったのにな。
まあ、あまりぼんやりしていてもどうかと思い、俺は家の中を見て回る。
特に変わったようなところはない。
誰か、俺でない人間が出入りしたり入り浸ったような形跡はない。
どうやら、こちらが呆れるほどに清い生活を送ってくれたらしい。
……ちょっとくらいの性欲発散くらいなら、許してやるのに。
まあその一途なところがあいつは可愛いんだが。
にまにましながら自分の部屋に入り、少し首を傾げた。
何か違和感がある。
何かが、俺の使っていた時とは違う気がする。
ひとつひとつ確かめながら、部屋の中を横切り、ベッドに腰を下ろすと、ふわりと甘い匂いがした。
この匂いは……、
「古泉…?」
ぱふんと音を立ててベッドに横たわると、古泉の匂いがはっきりとする。
「うわ……」
なんというか、これはいかんだろう。
いい匂いなのもよろしくないし、それが俺のベッドからするってのもいかん。
ぞくんと体が震えた。
古泉も俺を恋しく思ってくれて、だから俺のベッドで寝たりしたってことなんだろう?
もしかしたら、毎日のようにここで眠ってくれて、だから、こんなにも匂いがくっきりとついて……。
「う……わ…」
嬉しいと思うほどにどくんどくんと胸が高鳴る。
痛いくらいのそれに泣きそうになる。
「…っ、早く帰って来い……ばか……」
帰ってきたらどうしてやろうか、色々考えてた。
いきなりってのも悪いかと反省して、飯くらい作ってやろうかとか、それとも久しぶりに一緒に風呂なんてのも悪くないかとか、少しくらい焦らすためにあえて普通のマッサージをしてやろうかとか、あいつの好みなんかを考えながらわくわくして、色々計画してたのも全部吹っ飛ぶ。
早く、抱き締めてほしいし抱き締めたい。
体の中で一番正直な場所で感じあいたい。
燃え立つように体が熱くなる。
濡れないはずの場所が濡れて来るんじゃないかとさえ思える。
俺はもう堪らない気持ちになって、ぼすんと枕に頭を沈めた。
そのまま手をズボンの前に滑らせつつ、
「シャミ」
と呼べば、さっさと家の中のシステムを掌握したらしく、
『なんだね』
といつもと変わらない声が当然のように返ってくる。
「古泉の現在位置を調べて、予想帰宅時刻を割り出して報告してくれ。可能ならそれを早められるように工作しろ。優先順位はこちらを最優先でな」
『了解した』
「よし」
これでいい、と俺は下着ごとズボンをずりおろし、半ば勃ち上がりつつあるものを引っ張り出す。
「ん……っ…ぁ……凄い…な……」
古泉の匂いを感じて、古泉のことを思っただけなのに、こんなになるなんて。
「…っは、変態……」
自分で自分を嗤いながら硬くなるまで擦りたてる。
先走りで手はぐちょぐちょに汚れ、滑っている。
その滑りを利用して、足の間の窄まりに指を滑り込ませた。
「はぁ……っ、あっ……んぁ……」
それくらいじゃ足りないと思うくせして、興奮した体は貪欲に指へと絡みつく。
「古泉…、古泉……ぃ……」
はしたなく声を上げて自分を煽りながら、その行為に没頭しているところへ、
『古泉司令の現在位置は基地P−1内。帰宅予定は現時点では三日後の午後6時頃の見込みだ』
とシャミセンの報告が聞こえてくる。
「三日後……長いな……」
はぁ、とため息なのか喘ぎなのか分からない声を漏らしたところで、
『これまで待ったのなら、三日くらいどうってこともないのではないのかね?』
と言われたが、そういうものじゃないんだとこいつはまだ学習出来ないのか?
「会えない会わないという覚悟を決めた上で何年も待つのと、もう会えるかと期待した状態で三日待たされるのは違うんだ」
『ふむ……』
「ついでに言うと今は一刻も早くあいつに会いたいんでな」
『…その方法がないわけではない、ということは君も分かっているのではないのかね?』
悪魔の誘惑染みたその言葉に、俺はため息を吐き出す。
「そりゃ、な」
やろうと思えば簡単だ。
ちょっとセキュリティシステムをいじって異常を感知させてやれば、あいつは家主としてすっ飛んで帰ってくるだろう。
何万光年の彼方にいるとかでなく、軌道上でぐるぐる回ってるだけの基地にいる状況なら、それこそすぐにだって。
だが、それはあいつに迷惑をかける行為だ。
だから、したくない。
「…三日くらい、待つさ」
『それだけ本気と言うことかね』
「……きっとな」
この期に及んでもまだ、俺は好きというのがどういうものなのかよく分からん。
分からないから断言は出来ないままだ。
『ところで、』
とシャミセンは話題の転換を図るように口を開いた。
『ここに一通のメールがある』
「メール? 誰からだ?」
『ここの家主から、セキュリティシステムへの指示のメールだな』
「……それが?」
『私の一存で止めてあるため、この内容は実行に移されていない。その判断は君に委ねよう』
「一体なんだ? もったいぶって……」
『これを実行すると、ここのシステムがまず間違いなくダウンする』
「……は?」
『その結果、外部のセキュリティサービスへ連絡が行き、家主の彼もこちらへ確認に来ることになるだろう。それくらい派手なことになる内容だ。これを実行に移すことが家主の意思だとして……君はどうしたい?』
「え、あ……それ、って……」
つまり、あいつもちょっとくらいずるをしてでも帰ってきて、俺に会いたいと思ってくれたってことだよな。
じわんと胸の中が熱くなる。
体の熱も昂ぶる。
だが、
「その指示は廃棄、またはエラーとして送り返してやれ。送り返すなら、メッセージを添付してくれ。…馬鹿やってないで、とっとと帰って来いってな」
『了解した』
そう言ってシャミセンは気配を断ち、俺は改めて体をまさぐる。
「…ほんとに……早く帰れ……よ…?」
待ってるからな、と小さく笑えた。
しばらく放っておいたところで、体は冷めたりしていない。
むしろ、古泉のことを思い出したせいで熱くて堪らない。
ちょっとの刺激でもイけそうだ。
…それが、古泉からなら特に。
しかしそうはいかないのだから自分でするしかない。
俺は古泉の手の動きを思い出しながら、自分の乳首を左手で抓り、右手では脚の間をまさぐる。
滴り落ちる先走りをすくい取り、後孔に塗りこめるようにしてそこを広げるだけでも喉が震える。
「んぁ…っ、ふ………うぅ…こい、ずみ……」
名前を呼ぶほどに熱が上がる。
体を曲げて、指を伸ばして、出来るだけ深く指を埋めてやる。
そうして、弱い場所を思う様引っ掻いて、押し上げるとびくびくと体が跳ねた。
昔から変わりやしない生理的な反応に過ぎないはずだってのに、その昔嫌々やられていた時とはあまりに違いすぎる。
嫌々自分で慣らしていたのと、自分からするのとでは違うし、げんなりしながらするのと古泉の優しい笑顔とか気持ちよくしてくれる時なんかの少しだけ意地悪な顔とかを思い描いてするのとでは全く違う。
気持ちよくて堪らないのに、もどかしく、物足りない。
「はっ、あっ…、ん、古泉……! 早く……」
帰ってきてくれ、と呟いたら泣きそうだった。
涙なんて出ないとも思うが、それでも切なくて苦しい。
ワガママだと分かっていても、古泉を呼び戻してやればよかったなんて思えてくる。
だが、そのせいで本来あるはずの休暇が台無しになったりしたら悔やみ切れないものがあるし、もう三日くらい待てないでどうするとも思う。
古泉に会いたい。
抱き締めてほしい。
気持ちよくしてほしい。
気持ちよくしたい。
こんな気持ちが、好きという感情なのか、それも聞きたいなんて思いながら、俺は白濁をシーツの上に吐き出した。

「それにしても……」
一段落して落ち着きながら、俺は呟いた。
カップにいれたホットミルクは、古泉が前によく飲ませてくれたのと同じ配合のまま変わってないはずなのに、どこか甘味が足りなく思える。
物足りないそれに眉を寄せつつ、
「…古泉はまだ怒ってんのかね……」
そもそも、どうしてあんなに怒ったのかということさえ、俺には分からない。
相変わらず感情の欠落が埋められていないようで困る。
『私に聞かないでくれるかね。作り手の君が理解出来ない感情を、所詮君に作られた人口知能に過ぎない私が理解出来るはずがないだろう』
だよな。
「…まあ、最悪古泉に聞くか」
あいつなら、俺がそんなことも分からないからと言って幻滅したりはしないだろう。
事情を誰よりもよく分かっているんだし、それくらいで幻滅するならとっくに愛想を尽かしてるはずだ。
古泉といえば、
「シャミセン、お前、結局アレはどうしたんだ? 破棄したのか? 返送か?」
『メッセージの添付の指示が出たのでな。一応返しておいた』
「それに対する返事は?」
『まだ勤務時間中だから無理だろう』
「…来たら知らせろよ」
『了解している。彼からの連絡については最優先事項として指定されたまま変更はされていない』
「それでいいんだ」
と俺は笑ってマグカップを洗浄機に戻すと、
「少し寝る」
と声を掛け、ソファに横たわる。
革張りのそれにはあまり匂いらしいものもついていないから、今度こそよく眠れそうだなんて思いながら、古泉が帰ってきてからの分も寝溜めしてやろうと目を閉じた。