エロです
エロばっかりです
微妙に特殊な趣味……?
古泉の方が身長があるくせに、古泉の方が俺より体重が軽い、ということを知ったのは何の時だっただろうか。 よく覚えてはいないのだが、おそらく、ゲームを作るとかなんとか言ってハルヒが息巻いてた頃のことではないかと思う。 プロフィールを作るのに使うから、とかなんとか言ってたからな。 その時俺はハルヒに聞かれるまま、正直に身長体重を申請したのだが、その後古泉が答えるのを聞いて、少なからずショックを受ける程度には、俺はその時既にあいつのことを意識していたのだろう。 考えて見れば、特に運動をするというわけでもなく、体重に気を使うでもなく、怠惰に日々を消費しているだけの俺と、おそらくイメージ作りのために体作りをしていても不思議でないし、そうでなくても閉鎖空間でエネルギーを消費していそうな古泉とでは、差が出ても不思議ではないと思う。 そう思いながらも、そのことは喉につっかえた魚の小骨か、錠剤を飲み込み損ねたような感覚がいつまでも喉に残るのと同じように、俺の中でわだかまっていた。 もやもやしたものを抱えながらも、相変わらず日常はだらだらと過ぎ去って行くわけであり、気がつけば俺と古泉はお付き合いらしきものをするようになっていた。 「あなたが好きなんです」 と真摯に言われた時に、心臓を忙しなくばたつかせながらも頷けたのは上出来だったが、 「…僕と、付き合ってください」 と申し込まれたのに対して、体重のことがひっかかって躊躇ったのは、今思っても実にいただけなかった。 「やはり不安ですか?」 心配そうに聞く古泉に、 「そうじゃない」 と言うのがやっとだったくらい、俺はそのことが気になっていたのだ。 よっぽど、俺の方が体重が重いのにいいのか、なんて聞いてやろうかと思ったが、そんな意識は一秒未満で瞬殺した。 言えるか、そんな恥かしいこと! それが恥かしいという意識は十分ある。 どこの乙女だよ、いや乙男か、などと思う様自分の脳内回路を罵ってやりたくもなる。 そんな訳で、俺は言うに言えない不安を抱えたまま、古泉とのお付き合いを続けてきたのだが、付き合いはじめてそろそろ一ヶ月。 それが早いか遅いかは知らないが、少しずつスキンシップも冗談やシャレやお試しなどという軽い言葉じゃ済まされない領域に入りつつある。 ちょっと触れるだけだったはずのキスが脳髄を融かすようなものに変わってきているし、抱き締めあった時につい、互いの体をまさぐっていたりもする。 ここまでは、本当に俺たちは対等だったんだろう。 あいつが俺のことをぎらついた目で見るのと同じ程度には、俺もあいつの体に触れたいと思ったし、古泉一樹という奴がそのペルソナに反して、案外可愛い性格の持ち主であることを知って、どうにかしたいなんて衝動をぐっと堪えたりもするようになっていたからな。 それでも、俺には複雑な感情が渦巻いていたわけである。 そんなある日、俺は古泉に誘われるままあいつの部屋を訪れていた。 訪問は数回目だが、泊りがけでというのは初めてで、いよいよか、なんてびくついていたら、案の定だった。 夕食を終え、風呂から上がった俺が、古泉の姿を求めて寝室に入ったところで古泉に抱き竦められた。 「こ…いずみ……」 緊張に声が掠れる俺に、古泉は殊更に優しく頭などを撫でながら、 「怖がらないでください」 と甘く囁く。 「…あなたと、したいんです。…あなたも、ですよね? だから、僕の誘いに乗って、来てくださったんでしょう?」 そう熱っぽく求められて、俺に断れるはずがあるだろうか。 いや、ない。 「…条件、が、……ひとつだけ、ある…」 緊張に震える俺の額にキスをひとつ落として、古泉は言う。 「なんでしょうか?」 「……っ…俺が、下なら、いい…」 「……は?」 古泉はぽかんとした顔で俺を見つめ、 「…ええと……意味、分かってます…よね……?」 と戸惑いも露わに問うのへ、 「わ、分かってるに決まってんだろ!?」 「本当ですか? でも、だって、あなた…いつも僕のこと可愛い可愛い言って、抱き締めたりキスしたりしてましたから、てっきり……」 「…っ、嫌なのか!? 嫌ならいいんだぞ、俺は…!」 思わず逃げようとした俺の体を古泉はうまく抱き締めて、 「いえ、嬉しいです。むしろその方が嬉しいですけど、でも、どうして……」 「聞くな」 そう唸って、俺は自分から古泉に口付け、その首に腕を絡めると、そのままベッドに引き倒した。 キスは深く、激しい。 それが準備段階だなんて信じられないほどに気持ちよくて、熱を煽り立てられる。 「は…っ……ふ…んん……!」 苦しくてもがきたいのか、それとももっと求めているのか分からなくなりながら、腕をさ迷わせる。 背中に腕を回し、強く抱き締めて、えずきそうなほど深く舌を絡めあうだけで、このままひとつに融けてしまいたいなんて恥かしい考えが過ぎる。 「ん……ぁ、古泉…っ、も、っと……」 そう求めたらどうなるのか、理解しながらも言えたのは、そうでもしなければ古泉がその先に進めなさそうに思ったからだ。 それくらい、こいつは臆病で、へたれだからな。 「…嬉しいです」 囁いた唇が一度俺のそれに重ねられて、それからつっと首筋へと滑る。 くすぐったさにぴくんと体を震わせると、古泉は薄く笑った。 「な…んだよ…」 「いえ、…可愛いなと思って」 「な…っ……!」 恥かしいのか照れたらいいのか分からず、顔を赤らめて絶句した俺のパジャマのボタンに手を掛けながら、古泉は言う。 「可愛いですよ。今日のあなたは特に」 「アホか。お前の方がよっぽど可愛いに決まってる」 一方的にされるのは面白くなくて、俺はそう言って古泉のパジャマを脱がせにかかる。 「お前もさっさと脱げ」 「…じゃあ、脱がせてください」 と笑う古泉は本当に可愛いのだが、 「……やっぱり、積極的…ですよね」 「…なんだ今更」 「いえ……。それなのに、どうして下になりたいなんてことを言ってくださったのか不思議なだけです」 その言葉にぎくりとしながら、 「べ、つに…いいだろ」 「気になりますよ、やっぱり」 言いながら古泉は俺の胸元をすっかり開いてしまい、そこに手を滑らせた。 「ん…っ」 滑らかでひやりとした感触に体が震える。 「ねえ、どうしてなんです? マグロになってたい、なんて訳じゃないみたいですよね?」 「…っ、言いたく、ないし、……言わなくても、いい、だろ…。……黙ってたら、お前が俺に愛想を尽かすってんなら、考えてやるが…」 「そう言われたら大人しく諦めるしかないじゃないですか。…あまりしつこくすると僕が嫌われるってことでしょう?」 「さて、ね」 古泉のシャツを完全にはだけ、その素肌に手を滑らせるようにして直に抱き締めてやる。 いつもより若干高めの体温が心地好くて、同時に興奮した。 「したいな…」 思わずぼそりと呟いたら、古泉は顔を赤くして、 「僕もです」 「……ん…なら……、早く、しろよ…」 抱き締めた腕を解いて、自分から胸元を開いてやる。 それだけで古泉の喉が鳴るのが面白くて、思わずにやついてしまったんだろう。 「…笑わないでくださいよ」 と拗ねたように言われた。 「お前が可愛いのが悪いんだろ」 「あなただって、可愛いですよ」 言いながら古泉は俺の胸に手を伸ばす。 形や柔らかさを確かめるように肌を撫でて、それからそろりと少しだけ色の濃い突起に触れてくる古泉に、俺は苦笑して、 「お前って、ショートケーキの苺は最後まで取っておくタイプだよな」 「そうですね」 「そんなんじゃ、生存競争が厳しいところじゃ生き残れんぞ?」 「でも、時にはあると思いますよ。…ひとつしかない苺の方から、口に飛び込んできてくれることも…ね」 そんな戯言を言って、どこか意地悪く笑った古泉は、その突起に口付けた。 指で触れられるよりも熱くて、ぬるりとした感触に、むずむずとした感覚が湧き上がる。 「ん…っ……ぁ…」 「気持ちいい、です?」 「…や……分からん、が、…悪くはないだろ…」 多分、と口の中で転がした俺に、 「本当に嫌だったら言ってくださいよ? 流石に、あなたに悪し様に罵られでもしたら、頭も冷えて止まれると思いますから」 「…あほか」 ぴんっと古泉の額を指先で弾き、 「止まれない可能性があるくらいなら、理性なんてとっとと捨てちまえ。余計な心配なんだよ、そんなもんは」 「……あなたって、本当に男前ですよね」 「イイ男だろ」 ニヤリと笑って言ってやったのだが、 「ええ、全くです」 と同意されるとは思わなかった。 「そんなあなたを僕が組み敷いていいのかと思うくらいに」 「…あほか」 そりゃ、俺だって男だからな。 お前を組み敷いてあんあん言わせてえとか思うとも。 思うが、…俺は上になりたくないんだよ。 たとえ俺が上でも、こいつは優しいから重いだなんて言わないだろうが、そんな風に黙って無理されるのは嫌だ。 いっそ、重いとか言うんだったら嫌がらせみたく伸し掛かってやるんだがな。 寄りそうになった眉をなんとか平常の位置に留めながら、俺はシーツを掴んだ。 むずむずしていたそれが、少しずつ快感めいた形を取り始めたせいだ。 くそ、 「…っ、お前、変にうまくないか…?」 文句を言ってやりたくて呟いた声は、妙に甘くて怖気が走る。 しかし古泉は満足そうに笑って、 「そうでしょうか?」 「だろ。…やっぱり、女の子と経験でもあるのか?」 「いえ、特には。…きっと、あなたにこうしたいと、何度もシュミレーションしてたからでしょうね」 わざわざカタカナで言わなくていいだろ。 「妄想してたって、…っん、言え、よ……」 ふふ、と忍び笑いを漏らした古泉は、 「いっぱい、妄想してましたよ。あなたに触れたくて堪らなくて。毎日毎晩、いえ、授業中やSOS団の皆さんとご一緒している時だって、あなたに触れる妄想ばかりしてました」 「はっ……俺なんかで、って、…変態……」 「望むところ…ですよ」 くすりと笑って、古泉は更にそこをいたぶるようにしつこく刺激し続けた。 ぺろぺろと飴玉か何かのように舐めまわし、舌先でつつき、あるいは指で押し潰し、とそれこそどれだけバリエーションがあるんだというくらい色々に弄んだ。 おかげで、そこは真っ赤に熟れて、ちょっとした風が触れるだけでもじんと痺れる。 「…っ、古泉…、そこはもう、いい、から……!」 「だめですか?」 じっと上目遣いに見つめてくる古泉に、俺はこくこくと頷いて、 「下…っ、触れよ……」 「では、ここはまたの機会に…ね」 名残を惜しむかのように、もうひとつ、ちゅっと音を立てて口付ける古泉のせいで、ぴくんと体が震えた。 「ぁ…っ……」 「可愛いです」 なんとかのひとつ覚えみたいに繰り返す古泉の笑みには余裕が満ちていて、少なからず悔しいものがある。 だから、と俺はうまく力の入らない体を無理に起こして古泉を跳ね除けると、ベッドにぺたりと座った古泉の前に伏せるような形で、 「…っ、俺にも、させろ…!」 と古泉のズボンを寛げた。 「ちょっ……」 驚いている古泉に優越感さえ感じながら、硬く勃ち上がりつつあったものを下着越しに撫でる。 「凄いな…。触ってもなかったのにがちがちになってんじゃねえか」 「…っ、そりゃ、なりますよ。あなたがあまりにも色っぽいから…」 「誰のせいだ」 恨みがましく睨みあげると、古泉のそれがまた大きくなる。 つうか、可愛い顔してるくせにでかいんだよコノヤロウ。 悔しいものがある、とかなんとか思いながら、俺はそれに顔を近づける。 その臭いを確かめるように鼻を鳴らすと、古泉の顔が余計に赤くなった。 「やめてくださいよ…!」 「嫌だね」 真っ赤になった顔と、顕著に反応を示すそれと、はたまた臭いとのどれに興奮を煽られているのか分からなくなりながら、俺は古泉のそれを下着の中から引きずり出し、直に手で触れた。 「ん…っ、凄い、熱いな……」 それが手の中で脈打つたびに、こちらの熱まで上がる気がする。 ドキドキする。 ぞくぞくする。 生まれて初めて触れる他人のものだってのに、嫌悪感も感じず、俺はそれにそっと手を這わせる。 間近まで顔を寄せたのは、よく見てみたくてという理由だったのだが、そうすると古泉が驚くような怯えるような様子を見せるのが面白くて、ついつい悪乗りした。 それに軽く口付けてみたのだ。 「わ…っ!?」 唇をちょんと付けただけだからどうってことはないってのに、古泉は赤かった顔を青褪めんばかりにして、 「な、なな、何するんですか…!」 と言うから、 「ん? 口でしてやろうかと思って」 なんて軽口を叩いてみる。 「く、ちで…っ!? し、しなくていいですっ!」 ぶんぶんと首を振るのが可愛くて、もっといじめてやりたくなった。 だから、と舌を出し、先端から溢れている滑りをちょっと舐め取ってみたわけだが、やはりというかなんというか、お世辞にもおいしいなんてことは言えない味である。 それでも、俺から言い出したんだからという責任感と、古泉をもっと慌てさせて見たいというささやかな嗜虐心、それから、自分だったら嫌な顔をされたくないという思いと、おまけに男の矜持みたいなものもあって、俺は眉をしかめそうになるのを堪える。 そのうち舌が慣れるだろうと思いながら、舌を這わせ、ちゅっと吸い上げたりしていると、すうっと背筋をなぞられ、体を震わす破目になった。 「っは……、何すんだよ…」 「いけませんでしたか?」 と申し訳なさそうに言う古泉に、思わず言葉を詰まらせる。 「…い、いきなりすんな……」 「じゃあ、触らせてください」 「……しょうがないな」 不貞腐れた風を装いながら、古泉が取り戻しつつある余裕を奪ってやりたくて、俺は今度こそ口を開いて古泉のものを口の中にくわえ込んだ。 軽くくわえただけでも息苦しいのだが、古泉の動きを封じられたらしいのが嬉しくて、少々気にならなくなる。 もっと、と深くしようとしたところで、また背中を撫でられた。 そっと、それこそ羽根が触れるみたいなそれは、ぞくぞくとした感覚を残して行く。 「ふぁ……っ、あ……!」 「く…っ、……ん、本当に…負けず嫌いなんですから……」 お前に言われたくはないな。 ていうか、 「…っあ、ん、……なんで……こんな…、背中なんかで……」 息継ぎがてらそう文句を言った俺に、古泉は意地悪く微笑んで、 「あなたが感じやすくて嬉しいですよ」 「は、恥かしいことを言うな! アホか!」 「事実ですよ」 くすくす笑いながら古泉が背中から腰にかけてを撫で付けると、震えが来るほどに感じた。 ヤバい。 何しろ俺は風呂上りで、一応他所で着るようなパジャマを着用している。 というか、そうでなくても寝るつもりなら、ズボンのウェスト部分は当然ゴムで絞ってある。 つまりは、簡単にズリ下げられ、無防備な姿をさらすという訳であり、実際古泉は片手で容易にそれを行い、酷く恥かしい格好にさせやがった。 「ちょっ……!」 「いい眺めですね」 「や、めろって…、こんな、かっこ……」 「恥かしいですか? じゃあ、全部脱いじゃいます?」 「な…っ」 「それも嫌なら、これでいいじゃないですか」 とかなんとか言って古泉は腰から更に向こうへと手を滑らせる。 「んんん……っ…」 くすぐったい、と身を捩れば、 「腰をこんなに揺らして…」 と薄く笑われる。 「こ…んの、お前、性格悪いぞ…!」 普段の可愛げはどこに行った! 「あなたが可愛いからですよ。つい、我慢出来なくなるんです。それとも…調子に乗ってはいけませんか?」 そう言われると弱いくらいには、俺はこいつのことが好きであるらしい。 うぐぐ、と言葉を詰まらせた俺に、古泉は殊更ににっこりと微笑んで、 「いいんですよね」 と言うから、頷くしかない。 「ありがとうございます」 そう言った古泉は俺の体を抱き寄せ、膝に乗せるような形にしようとしたので、俺は慌てて身を引いた。 「…だめですか?」 しょげたように言われても、だめなものはだめである。 俺が何で下になるなんて言ったのか分からなくなるからな。 だから、と俺は顔から火を噴きそうな羞恥を堪えて、古泉に背を向ける。 その上、自分から下着もズボンもまとめて脱いでしまい、うつ伏せになると、何もかもさらけ出すように、出来るだけ高く腰を上げた。 「…こっちの方が、やりやすい…だろ……」 「……魅力的な光景ですね」 ごくりと喉を鳴らした古泉が手を伸ばしてくるのが、自分の肩越しに見えた。 その手が何かを確かめるように俺の腰から膝の裏までを撫で下ろすと、少しばかりに肉付きのよ過ぎる太腿なんかを撫で回され、 「こ、ら…っ、古泉!」 と思わず罵った。 んなとこ触りまくるな! 太ましいのが丸分かりだろうが! 焦る俺に、古泉は忍び笑いなど漏らして、 「滑らかで、触り心地がいいんですけどね」 「な…っ」 「でも、あなたも焦れておられるようなので…」 焦れるっていうか、焦ってるんだがな。 ちょっと違うだけで大違いだ。 とにかく、そんなところをねちっこく撫で回すのはやめてもらいたくて、 「…はや、く……」 と唸るように言ったってのに、そんなことで古泉は煽られるらしい。 「…堪りませんね」 独り言染みた呟きを漏らしたかと思うと、その指が背骨の延長線をなぞり、窄まりに触れた。 「綺麗ですよ」 …ちょっと待て、それは何に対する発言だ。 「ここの色も、形も、…綺麗だと思います」 恥ずかしげもなく言って、古泉はそこをゆるゆると撫で回す。 「っは……ん…」 くすぐったいというよりも背徳感めいた何かに体が震えた。 「ちょっと失礼…」 とか何とか言いながら、古泉はサイドボードに手を伸ばし、そこの引き出しから何かを引っ張り出した。 それが何かと言うことくらいは、俺も一応…その、なんだ、……予習らしきことをしていたから、分かる。 ローションだろう。 そのことに改めて、今からする行為を思い描いてびくつく俺へ、 「大丈夫ですから」 と殊更優しく囁いた古泉がボトルの封を切り、その中身を自分の手の平に広げる。 手の平から溢れた冷たいそれがぽたりと俺の腰にまで垂れてきて、びくりと体が震えた。 こんなことさえ気持ちよくなって来ている気がする。 更に恐ろしいのは、それが嫌でない自分の精神状態だ。 「…っ、ぁ、古泉……っ…! 早く…」 「あまり煽らないでください。…乱暴にしたくないんですから、ね?」 優しい言葉とは裏腹に、その声は酷く熱を持ち、焦れているように響いた。 その指が、窄まりに触れてくる。 さっきと違って滑った、しかも冷たいそれにびくりと身が竦む。 「力を抜いてください…」 「ん…っ、分かってる…」 息を吐き、力を緩めると、滑ったそれは想像以上に簡単に入り込んできた。 「ぅ……」 「大丈夫ですか?」 「…ああ、痛くはない」 ただ異物感がちょっとな。 「……どうしても無理そうなら、言ってくださいよ?」 「ん…」 頷いて、俺は頭を布団に埋める。 視界に何も映らなくなると、古泉の指の感触が酷くはっきりと感じられる気がした。 それはにゅぷにゅぷと湿った音を立てながら出入りし、一番きつい場所を慣らそうとしているところのようだった。 その度にむず痒いような、気持ち悪いような、なんとも言い難い感覚がして、俺は軽く布団を噛み締める。 それでも吐息は漏れるもので、 「く…っ、ふ……ぅ、う…」 と断続的な音が漏れた。 狭いところがいくらか緩まったのか、古泉の指が深くまで差し込まれると、他の指が当たる感触がして、根元まで指を飲み込んだことが分かった。 そのことが無性に恥かしく思えるのに、もっとと求めていた。 「凄いです…。あなたの中、とても熱くて、柔らかくて……」 「は…っ、い、うな…!」 「言わせてくださいよ。…とても素敵なんですから」 甘く囁きながら、古泉はもう一本の指で狭い入り口をくすぐり始める。 隙あらば入り込もうとしているのだろうと思ったのは正しかったらしく、体が弛緩した拍子に、ぐっと指を押し入れられた。 「ふぁ…っ!」 「痛みました?」 心配そうに聞いてきた古泉には悪いが、そうじゃない。 その拍子に指先が触れた場所から、痺れるような感覚が走ったせいだ。 「や…っ、ぁ、そこ……」 「…ここ、ですか?」 くんっと二本の指で押されたそこから、腰が抜けそうなほどの快感が走る。 「ひぁっ!」 「…なるほど、これが前立腺というものなんですね」 考察するように呟きながら、古泉はその場所や感触を確かめるようにぐんぐんと押して来るが、 「ちょっ…! ま、ぁん…! やっ、ひぅ、ぁあ…!」 ちょっと待て、やめろ、と言うことも出来ず、見っとも無い声を上げるばかりだ。 そこで快感を得られるのどうのってことは、俺も調べたから知っているとも。 知ってはいるが、にしたって、これほどまでとは思わないだろう!? 大体、慣れなきゃ無理だと書いてあった気がするぞ!? 「やはり、個人差があるんでしょうね。…あなたには素質があったようで、嬉しいですよ」 本当に嬉しそうな声で言いながら、古泉は情け容赦なくそこを刺激する。 だからやめてくれって。 涙かヨダレか分からんが、顔の下敷きになっている布団が湿ってきただろ。 「それでは、」 とか何とか言いながら、古泉は俺の体をころんと簡単に転がしてしまうと、俺を仰向けにした。 指を入れたまま、である。 どれだけ器用なんだと抗議してやりたかったのだが、それも出来ず、体の回転に伴って中を大きくかき回され、 「ひあぁ…!」 と耳障りな声を上げる破目になった。 布団がなくなったせいでクリアに聞こえるのが余計に居た堪れない。 「あ…っ、ふぁ…! や…、古泉……っ!」 「もっと声を聞かせてください」 テンプレな台詞を言いながら、古泉は俺の足を割り開き、体を割り込ませてくる。 俺はと言うと解剖台の上のカエルさながらの間抜けな姿をさらすばかりである。 ぐちゅぐちゅといやらしい音を立てながら指が出入りする。 奥に入り込むたびに、前立腺を突き上げられて体が仰け反る。 もうどうにかなりそうだと俺が思ったところで、古泉も限界だったらしい。 「もう、大丈夫ですよね…?」 荒い呼吸に熱っぽい言葉を乗せて、俺の中から指を引き抜いた。 「は…っ、あ……、…いいから、早く……」 そう求めるほどには、俺の頭も壊れていたらしい。 興奮に顔を赤らめた古泉が、俺が触れたりしていた時よりも硬くなったものを押し当ててくると、ぞくぞくした。 それだけでも感じる。 だが、それだけじゃ足りない。 「…っは、やく……ぅ…」 「…好きです……」 そう囁いて、古泉がその頭を押し込めてくると、少しばかりぴりりとした痛みが走る。 「く…っ、ん、うぅ……」 変に締め付けて自分が痛い思いをしないようにと息を吐き、括約筋を緩めようとするが、それさえままならないほど、その熱さに感じた。 融ける、融かされる、蕩ける。 一番えらの張ったところが入ってしまえば、後は容易に飲み込めると思うのだが、古泉はじわじわと腰を進めてくる。 その間に、痛みはかき消され、快感に仰け反った。 「ひ…っ、ぅん…! あ…っ、ア、ひぁあ……」 「痛くは…ありませんよね…? …声が、凄く、艶っぽいです……」 そう言っている古泉の声だって、よっぽどそうだ。 「は…、ぁ、…んん……!」 「…いい、です…?」 不安そうに聞いてくる古泉に、俺は唇を笑みの形に歪める。 言葉にするのは苦しくて大変だから、古泉を抱き締めて思いを伝える。 その頭を撫でて、キスをして、抱き締める。 それで通じたんだろう、古泉はほっとしたように笑って、 「愛してます」 と囁いて、腰を使い始めた。 「ひぁっ! あ! …ふぁん……!」 的確に前立腺を突かれて、跳ねる体を押さえつけるようにする古泉は、獣染みた顔をしていた。 それさえ、かっこよくて、それだけ古泉を興奮させているのが俺かと思うと嬉しかった。 だからと油断していたわけじゃない。 ただ、俺が考えてもいなかったことを古泉がしただけである。 ガツガツと突き上げていたはずの古泉が、不意に何か悪戯でも思いついた子供のような顔をしたかと思うと、 「ちょっと……、無茶、してもいいですか?」 と言ったのだ。 「ひ…っ、なっ……! ぅあ! っあ、ぁあ…!!」 その真意を問う前に、古泉が強引に俺を抱え起こした。 自然、重力に引かれるまま体が沈みこみ、古泉のものを深くくわえ込むことになる。 急に動かされた驚きによる締め付けによる快感に、あまりにも深い結合に、頭の中が真っ白に染まる。 「ひあぁぁぁ…!」 「くっ……、凄い、ですね…。深くて、気持ちいい…です……」 苦しさに顔を歪めているくせに、そのくせ古泉は笑った。 俺はというと、苦しさ以上の快楽に酔いながら、それでも、こんな風に古泉の上に跨らされて、自分の体重が古泉の体にかかるのは嫌で、逃れようともがく。 「やっ、やぁあ…! やめ、やめろって…!」 「どうしてです? ここはこんなに悦んでるのに」 官能小説か、と言いたくなりながら、俺は首を振る。 「やだ…っ、やめろ…!! 重い、だろ…っ」 その一言だけで、古泉は察したらしい。 くそ、こういう時だけ察しがよすぎるんだよ。 それでもまだ確信は持てない様子で、 「…もしかして、下になると言ったのも、それが理由だったんですか?」 知られた、と青褪める俺に、古泉は優しく微笑んでキスを落とした。 「…こ、いず、み……?」 「…本当に、可愛いんですから」 「んなぁっ…!? ひゃっ、やっ…あぁん……!」 ずんと深く突き上げられ、四肢が跳ねる。 「これくらい、軽いものですよ」 「ひ、うぁっ…あっ……!」 「ほら、ちゃんと持ち上げられているでしょう?」 そう言いながら古泉は俺の腰を支え、揺さぶる。 その度に俺の体は跳ね、勝手に暴れる四肢を押さえつけることも出来ないってのに、古泉はなんということもない顔でいる。 「…へ…、いき、なのか…?」 「平気ですよ。それに、どちらかと言うと、」 と古泉は苦笑して、 「いくらか肉付きがよくて、肉感的な方が好きですね」 「…っ、ひ、っは、ずかしいこと、言うな…っ! あっ、ぁっ……ふぁあ…!」 「もう少し増えてもいいですよ? こうした時に、指が食い込むくらい…なんてどうです?」 あほか、と罵ることも出来なかったのは、言いながら強く腰を掴まれ、激しく揺さぶられたせいだ。 「ねえ、これが理由なら、次からは逆がいいなんて言います? 僕としては…こんなにあなたが可愛く善がってくれるなら、このままを維持したいところなんですけど」 「ひぁっ、ぁ…?」 「いいですよね、このままで」 「ん…っ、いい、から……! ア、っひ、…も、っと、よくしてく……ぁあん…!!」 そう口走ったことを理解するまでもなく、俺の理性の糸はぷっつりと切れていたのだ。 「喜んで」 にや、と古泉が口角を上げるような笑い方をしたのも目に入らなかった。 「どうされるのがいいです? このまま深くゆっくりとしたいですか? それとも、ぎりぎりまで引き抜いてから一気に奥まで?」 「お…く、奥…っ、突いて…!」 「それでは、僕だけの力では難しいですね。ちゃんと、自分の足で体を支えて、腰を上げてみてくださいよ」 腰を掴まれ、引き上げられるままに、俺も腰を浮かす。 それだけでもがくがくと脚が震えるほどだってのに、 「むりら…っ、これ、いじょ……なん、て…!」 「もう少しですから、頑張ってくださいよ」 「んんぅ……」 はぁはぁと自分でも耳障りなほどに呼吸が荒い。 それを更に荒げんばかりに力を振り絞り、腰を上げると、一番狭い部分で古泉のそれのえらが引っかかって止まった。 「は…っ、はぁ……」 荒い呼吸を整えようとしていることくらい分かるだろうに、古泉は俺の腰をぐっと掴んだかと思うと、 「いきますよ」 なんて言いながら一息に突き上げてきた。 「ひあぁぁぁぁ……!!」 悲鳴染みた声を上げても、その衝撃は逃がしきれなかった。 熱くて強すぎるほどの快感に貫かれ、俺は白濁を吐き出した。 勢いよく飛び出したそれは、お互いの腹どころか顔辺りまで汚し、羞恥に顔が熱くなる。 「す、まん…」 「何がですか?」 「…っ、顔、汚れたろ…」 手を伸ばし、拭おうとしたのを止められる。 「どうせなら、舐め取ってくれません?」 「は…!?」 あほか変態、と罵れなかったのは、多分、まだ俺の頭がおかしいままで、しかも古泉のガチガチとしたものが俺の中で存在を主張していたせいだろうと思う。 「…っ、ばか」 それでもなんとか短くそう罵って、そのくせ俺は素直にその言葉に従った。 自分のなんて、古泉のそれ以上に舐めたくないと顔をしかめながら、古泉の顎についたそれを舐め取ると、小さく呻いた古泉がずんと最奥を突いた。 「ぃあぁ…!? な…っ」 「すいません、我慢出来ませんでした」 謝りながらも古泉は今度こそ貪欲に快楽を追う。 「ひぅっ…う、あぁ…!」 強すぎるそれに、先ほど吐き出したばかりのはずの俺まで熱を昂ぶらせる。 激しい行為は古泉が熱を吐き出し、俺の意識がふっつりと途切れるまで続いた。 余談になるかもしれないが、もう少し増えても、と古泉が言ったのは冗談でも方便でもなかったらしい。 あれ以来、俺があいつの家に行ったりするたび、そうでなくても、一緒に外で飯を食ったりするということになると、あいつはせっせと飯を食わせようとする。 そればかりか、 「食べた後に体を休ませるのはいいことなんですよ?」 とかなんとか言いながら、満腹のまま眠らせようとする古泉に、俺はどう対処したらいいのだろうか。 確実にむっちり感を増しつつある下半身と、相変わらずモデル体型を維持している恋人とを見比べながら、恨めしくため息をつくばかりである。 |