黒みくキョン…ってか古キョン?
そしてプレイそのものは別にハードじゃない
でも多分これはエロだし要注意なのでR18で

過度な期待はしないでください













































優しさは恐怖



熱に昂ぶった体がふらつくのは、高熱を出している時と同じことなんだろう。
視界も揺らいで、よく見えない。
そんな俺を介抱するように、ご主人様は本当に心配そうな声で、
「キョンくん、大丈夫ですか?」
と聞いてくださった。
「だ…い、じょうぶ、です…」
熱を持った喉が震え、うまく喋れなかった。
「もう下りる?」
「やっ…!」
まさかこれでもう「お出かけ」も終了なのかと慌てた俺に、ご主人様はとびきりの笑顔で、
「大丈夫ですよ。…駅でちょっと休憩しましょ?」
その笑顔を見れば、いや、それよりも前に、ご主人様が俺のためでないことをしないと信じていたから、
「……はい」
と頷けた。
だが俺からすると、ご主人様に俺如きを支えさせるのが申し訳なくて、
「…古泉、手を貸して…くれ……」
と言うしかない。
そうでもなければ古泉なんてとっとと追い返してやったのに。
が、ここで、
「キョンくん」
とご主人様からお叱りの声が飛んだ。
「だめでしょ? ちゃんとお願いしないと……」
「ご、ごめんなさい」
俺は慌ててご主人様に頭を下げ、それから古泉にも頭を下げる。
「…申し訳ありませんでした。……よろしければ、…っ、手を……貸して、くださいません、か…」
上目遣いにうかがえば、古泉はどこか冷たい目で俺を見下しながら、
「…いいでしょう。手でも肩でもご自由に」
その目にさえぞくりと来たのは、俺の体が熱かったからだと思いたい。
本気でお仕置きしてもらわなければ、といやらしくて欲に塗れ、自制の利かない自分の体を憎らしく思った。
ふらつく体を両サイドから支えていただきつつ、電車を降りた。
「しっかりしてね」
心配してくださるご主人様の声を心地よく聞きながら、誘導されるままにホームの片隅にあったトイレに駆け込む。
身障者用のそれは、三人で入っても十分な余裕があるほど広々としていた。
完全に、個室で三人きりになったと思うと、いきなり体の中に埋め込まれたものが震えだし、
「ふひっ……っ!? ひっ、あんっ…あぁ…!」
媚びるような嬌声を上げながら、俺はその場にくずおれるようにして倒れた。
昂ぶりきったものを冷たいタイルの床に擦り付け、熱を治めようとする俺の浅ましい姿を、ご主人様と古泉は酷く楽しげに見下していた。
その視線だけでも達してしまえそうなのに、ご主人様は許してくださらない。
「だめよ、キョンくん。そんなことしちゃっていいなんて、誰が言ったの? 躾がなってないって、あたしが古泉くんに笑われちゃうでしょ?」
「っ…! ご、めん、なさい…!」
額を床にこすりつけて謝りながら、俺は必死になって自制した。
だが本当は、もっと気持ち良くなりたい。
だから、
「お仕置き、してっ……ください…。俺のこと、躾直してください…!」
と哀願すると、ご主人様は優しく微笑んでくださった。
「ほんとにおねだりが上手なんだから」
いいわ、とご主人様は微笑した。
「帰ったら、たっぷり時間をかけて躾直してあげます。まず今は…お仕置きが先ね」
その言葉に、胸が期待で膨らむ。
どきどきした。
それと同じくらい、ぞくぞくする。
ご主人様の手でひっ叩いていただけるのだろうか。
それとも、あの美しい御脚で踏み付けてくださるのだろうか。
しかしやはり、ご主人様は俺のような下等なものの予想出来るような行動をなされるお方ではなかった。
にっこりと天使のように微笑んで、ご主人様は言った。
「古泉くん」
ご主人様が俺のものでない名前を呼んだことにきりきりと胸が痛む。
そんな独占欲めいた感情など、下僕の身に余るような反逆的行為でしかないことだと分かっていたはずだというのに。
「キョンくんをあなたの好きなやり方で犯してあげてくれませんか?」
ご主人様の告げた、お願いじみた命令に、俺の体が竦む。
そんな、と勝手に呟きそうになった唇を噛み締める。
ご主人様は俺を見もせずに、手にしていたリモコンでローターの電源まで切ってしまわれた。
体の中に籠もる熱がわだかまり、吐き出し先も見つからないまま身の内を焼くようだ。
「僕の好きなやり方で……ですか」
品定めでもするように、古泉は俺を見た。
その唇が楽しげに歪む。
「そうですね…。彼は、手酷くされるのが好きで、今もそれを望んでいるのでしょう? それなら逆に、嫌というほど優しく抱いてあげたらどんな反応をするんでしょうね」
その言葉に、びくんと体が震えたのは、期待のせいなのかそれとも不安のせいなのかさえ俺には分からない。
ただ、今も体の中で暴れつづける機械のせいで煽られた体をこれ以上焦らされるのはいっそ恐ろしいことのようにさえ思えた。
「そ……んな…」
呆然と呟く俺に、ご主人様は鈴の音のような軽やかな笑い声と共に、
「うふ、古泉くんったら意地悪ですね。そんなにキョンくんに嫌われたいの?」
「さて、どうでしょうね」
酷薄そうに笑った古泉が膝をつき、寒気がするほど優しい動作で俺の顎を上げさせる。
なんのつもりかと問う余裕もなければ権限もない俺が、その代わりにただその目を見つめ返せば、嫌に真剣な瞳にぶつかり、余計に混乱する。
何を考えているのか全く読めないことが怖かった。
「こ……」
「黙って…」
小さく囁くように言った唇が、俺のそれに重ねられる。
乱暴にされることを期待する体に与えられた、触れるだけのそれはあまりにむず痒くて、快感とも呼び難い。
呼び起こされた不安の方が、いっそ快いくらいだ。
キスは浅く、触れるばかりのものが繰り返され、深くても唇を舐めて行くだけだ。
それが酷くもどかしくて、自分から舌を求めて伸ばしても、古泉は薄く笑いながらその先端をそっと舐め返すだけで、余計にもどかしさが募る。
もっと、とねだろうとする俺をからかうだけのそれを、なんとかはっきり感じたくてそちらに集中していた俺のコートを、古泉はいとも簡単に脱がせていた。
露わになったのは、ご主人様が愛してくださった証の傷ついた肌と、先ほどの遊びの痕跡の数々だ。
まだ乳首に止められたままだったクリップを外し、古泉はそこに舌を絡めるようにしてきた。
「ひぅ……っ、んゃ……ぁ…」
じわりと痛みが滲んできて、それでやっと感じられたことに安堵したというのに、古泉の行為はそれ以上にはならない。
どこまでも俺を焦らすように、緩やかなものしか与えてくれない。
その唇できつく吸い上げて、その白い歯で噛み付かれたら、もっと気持ちよくなれるのに。
無造作に肌を這うような手の平も、実際には巧妙に傷跡を避けていて、本当にもどかしくてむず痒いものしか与えてくれない。
「ひ…っど……」
思わず、口をついて出た文句は、本心では、それを非難して、行為が酷くなることを望んでのものだったのかもしれない。
だが古泉はにぃっと笑って人の被虐心をくすぐっただけで、
「たまにはこういうのも悪くはないでしょう? 焦れるあなたも可愛らしいですよ」
と無意味に甘く囁く。
その手がするりと内股を這い上がり、きつくリングをはめられたままの俺のものに触れた。
「ぃあ…っ! …っふ……」
頭のどこかを焼かれるような快感に身を震わせれば、
「可哀相に……」
なんて嘘っぱちな同情を載せた声で囁かれ、それを緩められた。
「んなぁ…っ!?」
なんてことしやがる、せっかくご主人様が手ずからつけてくださったのに、と憤慨しながらも俺はそれを言い立てられない。
悔しさに唇を噛み、古泉を睨むしか許されない。
「ほら、イきたかったんでしょう? いいですよ」
そう言いながら、古泉がそれを扱くが、そんなのじゃ足りない。
普通にされたって、イけるわけがない。
「ワガママですね」
俺の反応を見てか、くすりと笑ってそんなことを言った古泉だったが、仕方ないとばかりに俺のアヌスに指を滑らせた。
そこから垂れた紐を引っ張り、リモコン式のローターを引きずり出す。
「ひぁぅ……っ!」
一瞬のその快感に体が震えた。
もっとほしい。
もっと、激しくして欲しい、のに。
「ああ、すっかり柔らかくなってますね」
と、古泉はもはや言葉責めにすらならないことを言ってくるくらいだ。
その指が中に潜って、確かめるように探る。
もっと痛くして欲しいのに、強く、酷く、して、ほしいのに、叶えられない。
酷い責め苦だと思った。
だから俺は、後できっとご主人様がきつくお仕置きをしてくださることを信じて、自分から脚を開く。
「…っ、も、我慢、出来ないから……っ、痛く、して、ください…!」
自分からそう懇願する。
哀願する。
精一杯の上目遣いで古泉を見つめてねだる。
出来る限りの媚態を作る。
ご主人様にも、したことがないほどに。
腰を振り、恥かしい言葉を口にして。
「ち、くび、…か、じって、欲しいです。引っ張って、ねじって、……ぅう、血が、出るくらい、して…ください…っ! お願い、お願いですからぁ…っ」
古泉は軽く目を逸らし、俺を見つめてもくれない。
せめて冷たく、あるいはせせら笑うように見下してくれたら、気持ちよくなれるのに、それさえしてくれない。
「ペニス、も、痛くして…、歯、立てて、それでダメなら、握り潰したっていいですから……! 痛いの、欲しい…です……ぅっ…」
ぼろ、と涙が溢れて来た。
止まらない。
止められない。
「お願いだから……ぁっ! 古泉の…、精液、飲みたい、です…。飲ませて…、舐めさせて……っ! 俺の、中、にも、いっぱい、出して……」
泣きじゃくりながら何を言っても、古泉は俺の望むようにはしてくれない。
望むほどに、それを裏切ろうとしてくる。
俺の中に入れられた指はひとつきりで、それも酷く緩慢でもどかしい動きしかしてくれない。
俺を見つめる目は、無視するでなく蔑視するでなく、演技なのだろうが同情や憐れみのようなものしか伺えず、そしてそれでは快感にはなりえない。
「ひっく……、ぅ、……ふ……っ…、お…ねがい……です……からぁ……ひ、どく……痛く、して……ください…。…うぅ……」
体を大きく震わせ、泣きじゃくる俺に、古泉は酷いトドメを刺した。
「…大丈夫ですから」
と嘘っぱちな、それでも酷く優しく聞こえる言葉を掛けて、そのまま俺をやんわりと抱き締めたのだ。
「…っう……」
髪を撫でる手は優しい。
俺の傷を刺激しないように、でもちゃんと抱き締めてくる腕の力加減も絶妙だ。
でも、だからこそ、
「……っ、酷い……!」
酷すぎる。
強く抱きしめてくれたら、その痛みでイけるのに。
髪を引っ張ってくれるなら、それでもいい。
引き裂くように乱暴に、突き立ててくれたらよかったのに。
イけないまま、熱を下げられる。
体の中では確かに熱がくすぶり続けているのに、それが火を立てることどころか、光を上げることさえ許さないように灰を掛けるような真似をされる。
ひたすらに泣きじゃくるしかなくなった俺を、古泉はまるで憐れむように見つめて、額にそっと唇を触れさせる。
そうして、古泉が離れて。

――そして、俺は本当に恐怖した。
ずっとご主人様がいてくださったのに、そのことも忘れ、古泉に快感を与えてもらうことしか考えられなくなっていた自分に。