女体化でエロです
キョンが女体化してるのに古泉が気付かないパターン
ただし、エロは温いですので、期待しないでください←
爽やかな青空が眩しい日曜の朝だってのに、俺はどんよりとした暗い顔で道を歩いていた。 まだ朝のアニメや特撮も終わっていないような時間帯のせいで、人通りは少ない。 そのことに感謝したいくらいだ。 足取りは比喩的な意味で重く、胸は事実として重たかった。 どういうことか、と首を捻る人と、なんとなく予想がつく人とではどっちが多いんだろうか。 俺としては、驚愕しながらもどこか冷静だった。 来るべき時が来てしまったかとでもいうような気にしかなれなかった。 つまりはそう予想外のことが起きた訳ではないのだが、だからといって平気であるはずなどなく、こうして長門に助けを求めに行こうとしているわけだ。 分かっていない人がいたら悪いので説明すると、目が覚めると、生まれたばかりの頃はともかく、物心ついてからは滅多に拝んだこともないような代物が自分にあり、日々慣れ親しんだものはどこかへ行っちまっていた、ということである。 端的に言おう。 俺が女の子になっちまってたのだ。 どうしてかなんて考える必要はない。 ハルヒのせいだ。 そうでない方が驚きだからな。 となると、それをなんとかしてもらうには長門に頼るしかない。 こういう現象で朝比奈さんの助力を得られるとは思えないし、古泉が役に立つはずもない。 というわけで、俺は家族がまだのんびりしているうちに、と慌ただしく家を飛び出してきたわけだ。 長門にアポも取れてないが、あいつのことだから状況は把握してくれているだろうし、そもそもアポイントメントが必要だとも思わない。 鶴屋さん並に伸びちまった長髪を欝陶しく思いながら、俺は早足で長門のマンションに向かう。 そうして、後少しで到着する、と思った時、すぐ目の前で黒塗りのタクシーが止まった。 とても見覚えがあるそれに、俺の足も思わず止まる。 もしや、と思った俺の考えは正しかった。 タクシーから降りてきたのは、古泉だった。 「古泉…」 お前まさか、俺のことに気づいて、と呟きかけてやめたのは、古泉が丸きり驚いた顔で俺を見たからだ。 タクシーもさっさと走り去る。 「……ええと、どちら様でしょうか?」 というのが、ぽかんとしたマヌケ面をさらす古泉の返答だった。 …マジかよ。 確かに、今の俺は普段からするとまるで思い至らないくらい変わっているだろう。 髪は長いし胸はでかいし、自分で言うのもおかしいが、ちょっと可愛いし。 にしたって、こいつなら分かってくれるんじゃないのか、なんて思っていた俺は、大いに落胆した。 「分からないのか?」 古泉の戸惑いに満ちた瞳を見つめて問うと、古泉は申し訳なさそうに、 「すみません」 と頭を下げる。 そんな姿を見て、からかってやろうなんて悪心が沸き上がったのは、ひとえにこいつが常日頃、俺を好きだとかなんとか言って俺をからかうからだ。 目には目を、とハムラビ法典も言っている。 「酷い…っ」 と俺はまるで泣き出したかのような声を上げて顔を手の平で覆った。 ああ見えてしたたかな妹やら、お人好しの俺をこき使うことに躊躇いのない親類のおかげで嘘泣きは見慣れている。 ましてや、今の俺は女の子なので、嘘泣きなんて簡単だ。 やったことがなかっただけ、多少なりともお粗末なものだったろうに、古泉には嘘泣きだと思われなかったらしい。 「すっ、すみません! あ、あの、泣かないでください…」 おろおろと慌てる古泉に、調子に乗った俺がわざとらしくもわんわん声を上げて泣き真似をして見せると、天下の往来ということもあってだろう、古泉は困り果てた顔で、 「と、とにかく家へ来てください。お話はそれからということで……」 とやんわりと俺の手を取り、歩き出す。 なんのことはない、目の前のマンションに住んでるから、タクシーをそこで降りたところに、たまたま俺が立っていたということらしい。 そんなわけですぐ目の前のマンションの一室に俺は連れていかれた。 俺が本気で泣いていると思ったからだろう、 「落ち着いてくださいね」 と優しく声を掛けながら、古泉は急いでこしらえてくれたらしいホットミルクを俺の前に差し出した。 こういう細やかさが女子にもてる秘訣なのかね、と思いながら舐めたミルクは案外甘かった。 温い牛乳ってだけで十分甘いんだから加糖すんなよ。 「…それで、ええと、すみませんが、僕はあなたと面識があるような記憶はないのですが、どこでお会いしましたっけ……?」 文芸部室で、と言ってやったらどんな反応があるのか気になりもしたのだが、もう少し、「超能力者」でもなければ「SOS団副団長」でもない古泉と話してみたくて、俺はとんでもない大ボラを吹いてやった。 細かく語るのも恥ずかしいくらいの、昔の少女マンガなんかなら恐ろしいほどべたでありながら、現実にはありえないというパターンの大嘘である。 幼い頃に将来を誓い合ったにも関わらず、俺が両親の都合で引っ越してしまったのだ、とな。 正直に言おう。 まさか引っ掛かるとは思いもしない。 大体、俺が女の子喋りをしてるんだ、いくら日頃聞き慣れてはいても不自然なものにしかならないだろう。 俺としては、古泉が訝しいと思ったところで種明かしをするつもりだったのだ。 しかしである。 「そう言えば…そんなことがあったような、気も……」 と古泉は呟いた。 お前の人生は一体どんなもんなんだよ。 波瀾万丈ってやつなのか? というか、詐欺師に引っ掛かるんじゃないかと心配になってくるほどの信じやすさだな、おい。 呆れながらも、俺がこの酷い冗談を続行したのは、こうなったらもうばれるまでやっちまえという悪戯心のせいである。 「あたしは、ずっと、古泉に会いたくて、探してたのに……」 とか涙ながらに言ってやった。 涙? そんなもん、瞬きを我慢すれば簡単に溜まるだろ。 というか、それよりもさっきの大嘘長話のせいですっかり女の子喋りが板についてきたことの方が気になるんだが、クセになったらどうしてくれる。 ともあれ、後は古泉のリアクション待ちだ。 さてどうするのかね。 この大嘘を信じたまま、俺をその心当たりがあるらしい彼女ということにしてしまうのか、それともいい加減おかしいと思うのか。 「――すみません」 というのが、古泉の返事だった。 「忘れていて、すみません。思い出せもしなくて、すみません。あなたに労力を費やさせてしまったことも、申し訳なく思います。でも僕は……あなたの気持ちに応えることは出来ません」 「どうして……!」 …って俺もいい加減役者だな。 俳優にでもなれるんじゃないか? などと余裕こいて考えていた俺は、 「今、好きな人がいるんです」 という古泉の言葉に度胆を抜かれた。 好きな人って、 「え……」 「すみません」 「…本当に? 嘘、じゃ、なくて……?」 「はい」 しかし、そんな素振りは見たこともない。 「嘘だろ…?」 「本当です」 「じゃあ、どんな子だか言ってみて」 試すように言った俺は相当に嫌なやつだと思うのだが、古泉は苦笑をひとつ漏らしただけで、文句も言わなかった。 「僕の好きな人は、僕と同じ学校の同学年の人で、とても優しい人なんです」 嬉しそうに、あるいは幸せそうに呟く古泉に、苛立ちらしきものを感じたのは、こいつが見たこともないような顔をしたからだろうか。 この一年ほどの間、こいつを気味悪がったりもしながら、それでも一応友人らしく接してきたと思うのだが、その俺にさえ、こいつは本音を少しも見せてなかったのかと思うと、無性に悔しく思えた。 しかし、誰だ? こいつが好きになるなんて、しかも、おそらくだが片思いに甘んじているなんて、よっぽどの高嶺の花だとでも言うんだろうか。 そんな子がいたか? 首を捻りたくなっていると、古泉は見てるだけでむず痒いような顔で続けた。 「詳しくは言えませんが、僕はその人と出会うまで、心は死んでいたも同然だったんです。何も喜べず、悲しめもしない、ただ苛立ちともどかしさと焦躁感を持て余してばかりいました。でも、その人と出会って、その人を知って、僕は変われたんです。この現状を楽しめるくらいに」 「古泉……」 知らなかった。 そんな存在がこいつにいたなんて。 それに、こいつがそこまで荒んでいたらしいということにも、俺は気づいていなかった。 「……告白したの?」 小さく尋ねると、古泉は苦い笑いを浮かべて、 「出来ません。冗談めかして囁くことは出来ても、本気で言える勇気はありませんから」 「……は?」 ちょっと待て。 「それって、冗談では言えるってこと?」 「そうですね、冗談としてごまかせる調子でなら、でしょうか」 ……待ってくれ。 「古泉は、そういうこと、色んな人にしたりするの?」 「いいえ、そんなまさか」 まさかはこっちの台詞だ。 つまり、何か? 古泉が好きなのは他ならぬ俺で、からかってるだけだと思ってたあの告白は、実は本気だったってことか? 「可愛い子?」 そうだと言ってくれたら俺じゃないということに出来ないだろうかと思いながら聞いた俺に、古泉はくすぐったそうな顔で、 「僕にとっては、他の誰より可愛らしくて、素敵な人ですね。……そういえば、あなたと少し雰囲気が似てる気がします」 ……そりゃ、そうだろうな。 俺のことなんだろうから。 まず間違いなく俺のことに違いないと確信したんだ。 いたってそっちの気のない俺はこのまま、こいつの話を聞かなかったことにして遁走したっていいはずだろう。 しかし、だ。 俺の意志に反して、顔は酷く火照り、激しい動悸に見舞われた。 古泉が俺を好きだなんて、全く嬉しくないはずだってのに、体と一緒に精神まで女性化したとでもいうのか、震えが来るほど嬉しかった。 そんなことがあって堪るか、正気の俺よカムバック、と思っても、 「あの、顔が赤いですけど、大丈夫ですか?」 なんて心配そうに優しい言葉を掛けられれば、簡単に吹っ飛んだ。 「大丈夫、だよ」 短く答えておいて、俺は古泉を見つめた。 いつもと見上げた時の角度が違うのは俺の背が縮んでいるせいだろうが、それならいつも以上にこいつが男前に見えるのも角度の違いのせいなんだろうか。 「…どうして、本気で告白しないの? 古泉が告白したらきっと、断る人なんていないだろうに」 「そんなことありませんよ」 と古泉らしく謙遜しておいて、 「……気持ち悪いと言われるかも知れませんが、相手はいたってノーマルな男性なんです。受け入れてもらえるような見込はまずありませんね。そうでなくても、彼は僕なんかじゃ相応しくないほど素敵な人なんです。…告白なんて、出来ませんよ」 そう言って自嘲するように笑う古泉に、胸が締め付けられるように痛んだ。 厳密に言うなら、それは痛みなんてものじゃなかったのかもしれない。 痛みにしてはあまりにも甘く、後ろめたい。 「……本当に、告白するつもりはないの?」 「無理ですから」 「……可哀相なやつ」 「……え?」 驚いたように呟いた古泉の、軽く見張られた目を見つめ、 「告白したら、意外とうまく行くかもしれないのに、お前はそれも試せないんだなってこと」 「……そうですね。僕はきっと、人より臆病なんです。そして、玉砕覚悟で勝負に出るには、今が恵まれすぎているんでしょう」 「……だったら、ねぇ…」 俺は古泉に迫るように身を乗り出した。 色気のないパーカー越しにでも、豊満な胸の形は分かるだろうというくらいそれを強調して、 「……あたしじゃ、だめ? 慰めにもならない?」 「……え…」 ぽかんとする古泉の目に映るのは、冴えない男子高校生なんかじゃない。 そこそこ可愛くて、プロポーションもいい女の子だ。 古泉を昔から好きで、離れ離れになっても、一途に思い続けてきた、女の子。 だから、「キョン」には出来ないことだって出来る。 「キョン」ならこんな風に誘うことは愚か、問い詰めることだって出来やしない。 それなら、今だから出来ることをしてしまいたかった。 古泉が欲しかった。 「その人には何も出来ないっていうなら、あたしが慰めてあげる。それが嫌なら、お前に振られて傷ついたあたしを慰めてよ」 言いながら、俺はソファから立ち上がり、パーカーも、インナーがわりのTシャツもまとめて一息に脱ぎ捨てた。 男物の下着を見られないよう気をつけながら、それもズボンごと脱ぎ、気づかれないようにまとめてテーブルの下に放り込んでやった。 そうして、すっかり素肌を露わにして、古泉に向き直る。 赤く染まった顔が、少なくとも、全く女に興味がない訳ではないと、俺のこんな姿に心を揺らす程度には魅力を感じてくれているらしいと伝えてくれた。 そのことに、とりあえずは安堵しながら、俺は手で胸を寄せ、精一杯の媚態を作る。 「…ねえ、古泉の好きな人って、あたしと似てるんでしょ? だったら、その身代わりでもいいから、……抱いて…」 「そ、んなことは……」 「頼むから…」 古泉ににじり寄り、吐息がかかるほどの至近距離からそう囁くと、古泉の喉が鳴った。 俺が古泉を煽れるということに、達成感にも似たものを感じながら、俺は言葉に詰まったまま黙り込む古泉の手を取り、自分でも頼りなく感じるほど柔らかな膨らみに押し当てた。 無理に触れさせた掌にさえ、ぞくんと体が震える。 「ぁ……、こい、ずみ……触って…」 小さな声しか出なかったが、その掠れ方は出した当人すら驚くほどに艶めかしかった。 発情しきった牝の声。 「しかし……」 まだ迷いを見せる古泉に、 「一度だけ、これっきりでもいいから。……抱いてくれたら、もう、諦める。古泉の邪魔なんてしないから、…だから、…お願い……」 潤んだ瞳で訴えた俺の唇に、柔らかなものが触れた。 それが古泉の唇だと気づくのが遅れたのは、俺にキスをされた経験がないからだ。 初めての受け身のそれに、悔しさもむかつきもなかった。 それが肯定の印であるということが嬉しく、俺は自分からしな垂れかかるように古泉の首に腕を回した。 深くなったキスは甘く、くすぐったい。 探るように唇に触れてきた舌が、少しずつ大胆さを増していくことさえ、悦びになった。 荒くなる呼吸も、熱を帯びた視線も、なにもかもが愛しい。 きつく抱きしめ合うことで押し潰されただけの胸も感じた。 愛撫でさえないそれすら、快感になるほど、愛おしかった。 「ん……、っふ、は…っ……」 苦しさに声を上げる俺の、そんな小さな声すら飲み込もうとするように、古泉は俺の口を吸った。 本当に息苦しくなる間際に解放され、脱力した俺は古泉を力無く見つめながら、 「は……、ぁ、古泉…、服、脱いでよ……」 「え…」 何を言うのかとばかりに俺を見るので、羞恥に顔を染めながらも、 「胸、服で擦れて、…痛いから……」 と答えたってのに、 「…敏感なんですね」 と笑って、赤くなったそれを緩くつままれた。 「やっ…! 何、して……」 痛みとむず痒さにびくりと震えた俺に、古泉はなだめるようなキスをして、 「触っちゃ、だめですか? 触ってと言ったのはあなたでしょう?」 「ぅ、あ……そう、だけど……」 「痛くしませんから」 「もう痛い、のに……」 無体なことを言っているはずの古泉ではなく、俺の方の語尾が濁るのは、話している間も弄ばれる乳首や言葉の合間を盗むように落とされるキスがくすぐったいせいだ。 「痛いだけですか?」 「……」 「それなら、止めておきましょうか」 「…っ、お前だって、止めらんないくせに…っ!」 苛立ちながら、緩くとはいえ主張を始めている熱を手で押さえると、古泉が痛そうに顔をしかめながらも笑った。 「すみません、意地悪が過ぎましたね。…あなたが可愛くて、つい……」 「ばか。好きでもないのに、そういうこと言うな……」 「…すみません」 「謝るな」 怨みがましく睨みつけて、俺は古泉にキスをする。 覚えたばかりの拙さでも、手の平の下の熱は高くなる。 「…やめ、ないで……もっと、して…」 頷いた古泉の掌が丸い乳房を柔らかく包む。 その唇は悪戯でも仕掛けるように、俺の耳をくすぐった。 「んん…っ、あ…、そこ、だめぇ……」 甘ったれたような声を上げながら、古泉に縋り付く。 古泉は俺を膝に抱いて、やわやわと膨らみを揉みしだいた。 「そこ、とはどちらでしょうか」 「ひぅ、あっ、ぁ、そこ…! 耳、嫌ぁ……」 くすぐったさに身をよじる俺の腰を抱いて、 「嫌ですか? 本当に?」 こくこくと頷けば、 「でも、気持ちよさそうに見えますよ」 「んなっ、こと、ないぃ…」 「僕も、気持ちいいです…」 「ふ…ぁ……?」 なんでだよ。 お前は俺に触れてるばかりだろ。 「触れるだけでも気持ちのいい柔肌ですよ…」 俺の上げる恥ずかしい嬌声よりも、ずっといやらしい声で古泉は囁いた。 その掌が、体のラインを確かめるように、ゆっくりと素肌を滑ると、それだけでずくずくとした疼きが体の内側で沸き上がる。 「ひぁん…っ! や、古泉…」 「舐めてもいいですよね」 それはもはや問い掛け等ではなく、確認ですらなかった。 今、耳元でそう囁いたはずの唇が、耳たぶを甘噛みして、首筋を滑り、肩に触れる。 「ふあぁ…!」 それだけでも、声を上げ、体を震わせる俺を滑らせ、体勢を変えた古泉は、片手とソファの背で俺を支えながら、膨らみの先端に顔を近づけた。 「綺麗ですね」 と感嘆するように呟かれた吐息が触れる。 「や……」 身をよじって逃れようとしても、柔らかな乳房は少し手を添えられるだけでその意のままに形を変え、向きを変えてしまう。 充血し、敏感になった先端の突起を舌で舐められ、ずくんと体の奥が震えた。 「…ひ、ぁあ……」 形を確かめるように舌でなぞり、更にはそれを口の中に含んだ古泉は、それを優しく舐めるかと思えば甘噛みし、思わずのけ反った俺が痛みに、 「やっ、い、ったぁ……!」 などと泣き声じみた声を上げても、それを離してくれない。 そうかと思えば、それをちゅくちゅくと音がするほどに吸い上げ、俺を震わせる。 最初、くすぐったさが勝っていたはずの感覚はいつの間にか快楽に変えられ、おかしくなりそうなほど執拗な愛撫に捕らえられた俺は、気がつけば自ら胸を寄せ、 「は、んたいも、…して……」 とねだり始めていた。 それまで一方に集中していたのは、俺にそうしてねだらせるためだったんじゃないかと思えるほど、古泉はもう一方を放置した。 だから、そっちは慣らされてないはずだってのに、 「いいですよ」 と薄く笑った古泉が手酷く吸い上げても、痛み以上に快感を拾った。 「ひあぁっ、あっ、ん、…気持ち、いい…! もっと、して……」 自分が何を口走っているのかと自制することはおろか、理解することも出来ない。 それくらい、気持ちよくて、愛おしくて、嬉しかった。 古泉が好きなのは本来の俺で、今の俺はその身代わりということになって抱かれてる。 それでもこんなに古泉は優しくて、気持ちよくしてくれるなら、本来の俺相手なら、どんなにしてくれるかは容易に想像出来た。 それが、嬉しい。 両の胸が痛々しいほど真っ赤になっても、熱は収まらない。 「両方いっぺんに、してぇ…」 甘えた声を上げながら、大きな胸を自分で寄せ、その先端が触れ合うほどに近づける。 古泉の唾液に濡れたそれが、軽く擦れるだけでも気持ちよかった。 「やらしい」 そう楽しそうに笑いながら、古泉はふたつの突起を一度に口に含んでくれる。 「あぁ、ぁっ、やぁん…! い、いぃ…」 とろとろになりそうだと思いながら、胸に意識を集中させ、快楽を貪る俺は、さぞかし無防備だったことだろう。 何しろ、自分がいつの間にかソファに寝かされていることにも、古泉の手が自分の体を探るように這い回っていることにも、ろくすっぽ注意が向かなかったのだから。 それくらい、気持ちよくて、夢中になっていた。 胸の強烈な快感に比べて、背中を撫で、柔らかなお尻を軽く揉みしだくような感覚はどこか遠くて、もっと強く等とかなりとんでもないことを要求した気もする。 それでも、古泉の手が慎重な手つきで腿の間に入ってくると、流石にそちらに意識が向いた。 「…っあ、こいず、み……?」 「凄いですね、ここ」 呟きで俺の胸をくすぐりながら、古泉は指先で谷間をなぞった。 そのむず痒さに、 「んんっ……!」 と体をよじろうとした俺は、その拍子にそこから何かが溢れ出たのを感じて硬直した。 なんだ、今のは。 「ほら、こんなに濡れて…。凄い、音がしますね」 古泉がからかうように言って指を動かすと、そこからは本当に、くちゅりと淫らがましい水音がして、俺の羞恥を煽った。 「い、やぁぁ……」 「何が嫌なんです? ……ああ、これじゃ足りません?」 そう言って、古泉の指は谷間を這い上がり、小さな芽をつまんだ。 「ひあぁっ!?」 思わず鋭い声が上がったのは、それが乳首に与えられる刺激なんかよりももっとずっと強烈な感覚だったからだ。 まだ快感とは言えないそれだが、いずれ快楽以外の何物でもなくなるということは、一度経験したことで分かった。 だからこそ、怖い。 「やっ、こ、古泉…! 怖い……」 「どうしてです?」 「き、もち良すぎるの、怖いからぁ……!」 「優しくしますから、ね?」 そう言って、古泉は胸元から離れ、悪戯するみたいにへその横をくすぐってから、その小さな芽に顔を近づけた。 「な、に……?」 「これなら、指より痛くないでしょう?」 そうして触れた滑らかな感覚に、ずくんと体が疼く。 確かに痛くはないのだが、それだけに、快感だけを集めたようなそれに、 「ひっ、あ、あっ…あぁ……っ!」 と引っ切りなしに声が上がる。 ぴちゃ、という音に、舐められていると気づいた瞬間、恥ずかしくて死にそうになった。 「やだ…! 古泉、やめ、き、汚いからぁ……」 涙声になりながら訴えても、古泉はやめてくれない。 そればかりか、溢れた粘液を音を立ててすすり、芽を吸い上げる。 「ひぃぁ…! い、く……!」 射精感とは違うのだが、どこか似た感覚に悲鳴を上げた瞬間、目の前が真っ白になり、体が大きく痙攣した。 苦しいほど荒い呼吸を繰り返し、脱力した俺に、 「……よかった、ちゃんと気持ちよくなってもらえたみたいですね」 と古泉はほっとした声を漏らした。 「何それ…」 呆れていいのかよく分からないまま呟いたら笑えてきた。 「もしかして、初めてだなんて言わないよね?」 「初めてですよ」 恥じらいもしなければ悪びれもせず、古泉は言った。 「女性にこんな風に触れるなんて、生まれて初めてです」 「そんな、だって、お前、もてるくせに……」 「それでも、初めては初めてですよ」 そう言って古泉は柔らかく微笑んで、それから打ち明け話めかして囁いた。 「あなたも……でしょう?」 「あ!? …あ、あたしは……」 「婀娜っぽく振る舞って見せてもだめです。分かりますから」 くすくすと笑って、古泉は俺の頬を軽く抓ると、たしなめるように言った。 「自分を大事にしなくてはいけませんよ」 「んなこと言ったって……」 「ではせめて、こういう風に誘惑する時には、ゴムくらい用意してくださいますか?」 「なっ…!」 かぁっと顔を赤らめる俺に、古泉はどこか偽悪的に言う。 「これでもし万が一ということがあって、あなたに責任を取れと迫られるのも、僕としては少なからず困るものですから」 「んな、こと……本気で思ってないくせに…」 ぶつぶつと文句を言う俺に、古泉は意地悪く、 「僕だって、我が身は可愛いんですよ」 「……へたれ。据え膳食わぬはなんとかって言うのに……」 「そういう性分なんですよ。…ほら、服を着てください」 「……お前は平気なの…?」 と恥ずかしげもなく股間を注視する俺に、 「正直に言いましょうか」 と古泉は困ったように笑った。 「本当は、このまま誘惑に乗ってしまおうかとも思ったんですよ。でも、あなたを見ていたらどうしても彼を思い出してしまうんです」 「彼って……お前の思い人のことか」 はい、と頷いた古泉は、情けない感じに笑う。 「そうしたら、あの人に顔向け出来なくなるような真似は出来ないと思いまして」 「……ばかじゃないの? 純情ぶって、片思いの相手に操立てなんて」 「そうですね、あなたのおっしゃる通りかと」 「あたしにはあんなことまでしたくせに、本当に好きな人にはまともに告白も出来ないなんて、ほんっと、ばっかみたい」 「すみません」 嫌な顔もせず話す古泉に、毒気を抜かれた。 俺は小さく笑って、 「…お前のそういうところも、好きだけど」 「……ありがとうございます」 よかったら、と古泉は少しだけ本気の顔をして、 「僕があの人を完全に諦めた頃にでも、まだ僕に未練があったら、また訪ねて来てくださいませんか?」 「やだ」 と俺は笑う。 「お前の恋が叶うって分かってんのに」 「どうしてです?」 「分かるから」 それ以上俺は答えず、ソファから下りると服を着た。 律義に顔をそむけてくれたおかげで、古泉は何も気づかなかったらしい。 「今度来る時があったら、忘れずにゴムを持参して来るよ」 捨て台詞みたいなことを言って、俺は古泉の部屋を出た。 どうやって男に戻ったのか、なんて話はする必要もないだろう。 それから、俺がドラッグストアの不透明なビニール袋に何を入れて歩いているのかなんてことも。 目指している場所も、言わなくていいかもしれない。 予想がつかない人間の方が珍しいに決まってるからな。 そういうわけで、俺は決まりきったことを実行するだけのような顔をして、その実、酷く緊張しながら、目的の部屋のインターフォンのボタンを押した。 呼び出し音が響くことしばし。 『――っ、どうしてあなたが…!?』 狼狽しきった古泉の声に、俺はにやりと笑って言ってやる。 「いいから、開けてくれ」 すぐにドアは開かれた。 俺の返事なんて聞かずに飛んできたんじゃないか? 「邪魔するぞ」 と声を掛け、半ば強引に部屋に上がりこむ俺を、古泉は信じられないものを見るような目で見た。 「どうして家が分かったんです?」 「お前が上げてくれたんだろ」 「えぇ?」 「約束した土産だ」 ぽんとビニール袋を渡してやると、古泉はどこかまだぽかんとしたままそれを覗き込み、それから顔を真っ赤に染めた。 「なっ、どっ…!?」 「落ち着け。言葉になってないぞ」 落ち着けますか、とでも言いたかったんだろうか。 古泉が酸欠の金魚みたいに口をぱくつかせるのを痛快な気分で眺めながら、俺は笑ってやる。 「お前が言ったんだろ? 誘惑する時にはゴムくらい用意しろって」 ローションはおまけに買っといただけだから好きにしろ。 「説明してほしかったら飲物でも出せ。ホットミルクでもコーヒーでもいいから」 ここまで言えば流石に分かったんだろう。 勝手にソファに腰を下ろした俺のところへ、熱いコーヒーを持ってくる頃には古泉は落ち着いていた。 が、いくらか憔悴したような顔つきで俺を見て、 「あれは、あなただったんですね…」 と怨みがましく呟いた。 あれとは酷いな。 だが、 「分かったか」 「ええ。…服装も変わってませんからね」 そういえばそうだったな。 綺麗な褐色の液体をパステルカラーに濁らせ、それを覗き込むようなふりをしながら、俺は古泉の様子をうかがった。 その顔に見えるものに、明るいものはない。 「…嫌そうな顔だな。なんだ? 同じ俺なんだったらやっぱり女の方がよかったか?」 「いえっ、そ、そういうわけでは、…ないんですけど……」 段々と声をしぼませながら古泉は途方に暮れたように呟いた。 「…どうしたらいいのかと、思ってしまって……」 「はぁ?」 本当にお前はヘタレだな。 「この期に及んでまだ告白出来ないなんて言うつもりじゃないだろうな?」 「……」 ……呆れた。 しかし、呆れはしても、古泉のことを愛しく思える。 見た目以上に純情で、頭が固くて、一途で、そのくせ、やっぱりそこは年頃の男子高校生ということなのか、誘惑されると流されそうにもなる。 そんな古泉が、俺はどうしても好きらしい。 「なあ、古泉、」 俺はほんの数時間前にしたように身を乗り出し、古泉にしな垂れかかる。 「愛してる。お前が好きだ。……お前が言えないなら、俺から言ってやる。それで問題なしだろ」 「……そういう問題じゃないって、分かってて言ってますよね」 そう恨むように俺を見つめながら、古泉は俺の腰に腕を回す。 それだけでずくんと体の中が疼く気がするのは、さっきの経験のせいだろうか。 「お前だって、本当は分かってんだろ? お互い諦められやしないってことも、俺とお前が付き合うってことが問題になるのかってことが実際にはどうか、結構疑わしいってことも」 小さく笑いながら、俺は古泉に口づける。 「……愛してます」 観念したように、あるいは我慢出来なくなったかのように、古泉がそう囁き、震える俺の体をなぞる。 そうして今度こそ、中断する事なく、本懐を遂げられたのだった。 |