温いエロです…
っていうか、キョンが本当に酷い感じです
古泉司令は…ええと、本当にごめんなさいな感じです
それでもいいぜって猛者はどうぞ…;;;





































似て非なるもの



一体何がどうなったのか分からないまま、俺は通された部屋のベッドに横になっていた。
ここはどこか。
…あー……なんでもどこかだいう帝国だか皇国だかの、基地のひとつらしい。
詳しい所在及び座標は不明。
そりゃそうだ。
俺は招かれざる珍客だからな。
それがどういうことか、詳しい説明はやめておこう。
俺にも分からん。
よく分からんが、とりあえず今のところ身の安全は保証されているらしい。
それなら怯えるだけ無駄だ。
リラックスして体をいつでも動かせるようにしておいた方がいい。
と言うわけで、俺は早々に寝ようと思っていたのだが、明かりを落とす直前にドアが開いた。
「失礼…。お休みになるところでしたか?」
そう言って入って来たのは、顔と声なんかは非常に見覚えがあるどころか、目を瞑っててもありありとその姿を思い描けるほど見知った男なのだが、着ている軍服が違う。
それに性格もどうやら違うらしい。
俺の知るそいつよりもよっぽど神経質そうに見えた。
それから、どこか子供っぽくも見える気がする。
「何か問題でもあったか?」
俺が問うと、
「いいえ、別段何も。ただ、あなたがお暇で、余力がおありでしたらお話でも、と思いまして、」
そう品よく笑ったそいつに、俺はなるほどと思った。
古泉は古泉、ただ顔や名前が似てるだけではないということか。
「いいぜ。『お話』とやらをしようじゃないか」
そう言って俺はベッドに半身を起こしてそいつを手招きで呼んだ。
「失礼します」
どこか嬉しそうな顔をしたそいつが近づいてくるのを手の平で止め、
「ドア、ロックしとけよ」
「え?」
「お前だって、邪魔が入ったら嫌だろ」
「そうですね」
素直に頷いたそいつが自分の端末を操作するのを見つめる。
線の細さも整った顔立ちも変わらない。
不気味なまでにそっくりだ。
これが、生き別れの双子の兄弟なんていうことなら、もっと違ってるだろうにそうじゃないから余計に薄気味悪い。
しかし…それだけにぞくりと来るものがあった。
よし、イケる。
ごくんと音を立てて生唾を飲み込み、俺は古泉を待ちうける。
古泉が端末をしまったので、俺は念のために問いかけた。
「この部屋に監視装置なんかはあるのか?」
「いえ。あなたはお客様ですから」
「…そうかい。じゃあ、思う存分出来るってことだな」
「そうですね」
と返した古泉に、俺は薄く笑う。
上着はさっき寝ようと思った時に脱ぎ捨てたから、問題ない。
思う存分やれそうだ、と思いながら俺は古泉――ああ、古泉だ。役職は違ってもな。だから色々と問題ない――に向かって笑いかけ、
「立て」
と低く命じた。
「え?」
戸惑いの声を上げる古泉に、
「立てって言ったんだから立てよ。鈍いな」
チッと舌打ちした瞬間、反射的に脚が動いていた。
ひゅっと小気味いい音を立てて、俺の脚が空を切る。
座った体勢だったのがまずかったか。
避けやがって。
可愛くない。
「なっ、何をするんですか!」
驚く古泉に俺はぺろりと唇を舐める。
「だから、『お話』だろ?」
「どうしてそれでこうなるんです。今更反抗するつもりになったのかと思ったじゃないですか」
「うるさい。蹴られたりして悦ぶ変態は黙って俺の言うこと聞いてろ」
「へん…っ!?」
絶句した古泉に、俺は笑ってやる。
「ああそれとも、まだ知らないのか?自分の性癖」
セーヘキ、とわざと軽薄に言葉を響かせると、古泉の顔が赤くなる。
ん?
この反応はもしかして……。
「なあ、お前ってまだ……」
言いながらぞくぞくしてくる。
いかん。
俺は決してそういう趣味はないはずなのだが、この赤くなった顔やら、さっきまで部下の前でビシッとしてた姿とのギャップで興奮してくる。
俺の古泉に勝るとも劣らじ、だ。
「な、なんですか…っ」
「…女性経験、いや、この際男でもいいか。…性交渉の経験もないのか?」
返事はない。
しかし、答えは分かった。
俺はにやにやにまにましながら、赤くなって震えている古泉の肩に触れた。
「随分真面目に出世街道を歩んで来たみたいだな?」
「…放っておいてください」
「いやいや、いいって。そういうのも悪くない。むしろ、いいな。ああ、いい」
くどいほどに繰り返しながら、俺は古泉を抱き締める。
「…っ、何を……」
「教えてやろうか?」
「は……?」
「どんなかってこととか、それに…そうだな。お前も多分持ってるだろう変態性について」
クスリと意地の悪い音を立てて俺は笑った。
そうして、古泉の肩からマントを外し、床に落とす。
「ちょ…っ……」
「気持ちよくしてやるよ。…最高に、な」
上着も剥ぎ取り、薄手のインナーをも脱がせる。
抵抗しないのは戸惑っているからなどというつまらない理由のせいではないに決まってる。
期待しているのだ。
こうして、襲われることを楽しんでいる。
「…やっぱり、変態だな」
笑いながら、古泉の耳に唇を寄せ、そっと噛んでやる。
形もよく、柔らかなそれが自分の歯で歪められる快感。
ああ、堪らんね。
ぞくぞくして来やがる。
「下も…脱がせてほしいか?」
かすかに囁けば、びくりと怯えるようにその体が震えた。
「なあ、どうなんだ?やめた方がいいなら、やめてやるが……」
囁くほどに、震える体が朱に染まる。
顔どころか耳も、うなじも、軍服より白そうな素肌が薄く染まって行く。
そのまま黙って待つことしばし。
俺がそろそろ体を離してみようかなどと思ったところで、か細い声がした。
「…やめ、ないで……ください…」
かかった。
俺は薄寒く笑って、
「やめなくていいんだな?」
「…はい」
「つまり、もっとして欲しい、と」
「…っう……」
泣きそうな声が滲んだと思ったら、
「して…、欲しいん…です」
予想よりずっとはっきりした声が返ってきた。
ふぅん、飲み込みはいいってことかね。
「もっと?」
「…はい、もっと、してください……っ」
「もっと、どんなことをしてほしいって?」
「…もっと、い、やらしいこと、してほしいです…」
「…いい返事だ」
ニタリと笑って、褒美としてその首筋にキスをする。
「っ…!」
びくっと体を震わせた古泉が、泣きそうな目をこちらに向ける。
「泣くにはまだ早いだろ」
あえて優しく髪を撫で付けて安心させておいて、いきなり髪の束を掴み、引っ張ってやった。
「うぁっ…!」
「軍人がそんな簡単に声を上げてたらいかんだろ」
意地悪く笑いながら、ベッドに古泉を引き倒した。
「あ…!」
「さて…どうしてやろうかね。初めてなら優しくソフトに…とは思うが、最近はそういうのもご無沙汰だったからなぁ……」
最初のうちってのはどうしてたかね、と思いながら考え込んでいると、
「あ、あなたは、こういうことをいつも…?」
と怯えた風に問われたので、俺は今更何をと呆れた。
これだからチェリーは。
「そもそも、俺をこういう風にしたのは、俺のお前だからな」
「…ええと……あなたの知る『古泉一樹』が、ということですか」
そうだ。
「…あいつときたら、本当に変態でな。俺が嫌だって言うのに迫ってきて、思わず散々に抵抗したら興奮してイきやがった」
「え…ええ……?」
嫌か。
嫌だろうなぁ。
俺だって嫌だ。
それなのに付き合ってんだから不思議なもんだが。
「付き合って…?」
「…あの普段は見せないアホさ加減と、形振り構わぬアタックにほだされたのと、何より、」
と言うか多分これが決め手なんだが。
「あいつの心身の頑健さにやられた」
「……はい?」
まあそう耳を疑うな。
お前の耳は正常だから。
「あいつ、本当に丈夫なんだよ。蹴っても殴っても罵っても握り潰しても引っ張っても抓っても噛み付いても引き抜いても転がしても踏んでも跨っても詰ってもつついても、まあとにかく何しても平気で興奮するから、こっちも良心の呵責を覚えることなく好き勝手出来るのがよくてな」
「…つまり、あなたって……」
「…サディストっていうか、ただの乱暴者じゃないかと自分でも思うが、止められないからそういう風に出来てるんだろうな。おかげで昔から、組み手なんかの訓練が楽しくて……」
「は…ぁ……」
「まあ、そういうわけだから、」
俺はよいしょと古泉の腹の上に跨った。
「好きに喘げ?」
「あ、喘げって…!」
「ああ違うか。どう喘がせてほしいか聞くべきなのか?」
「な…っ!」
「ちなみに、ソフトなのって、どんなのだと思う?」
「わ、分かりませんよそんなの…!」
だよな。
SM初心者ってばかりか、セックス自体初めてじゃな。
しょうがない。
「俺が物足りないくらいで多分いいんだろう」
多分そうだ。
「な…なんなんですかその曖昧な…」
「仕方ないだろうが。他に見切りの付けようもないんだから」
言いながら俺は古泉の首筋に軽く噛みつく。
血は出さないように、加減して。
「ひっ…、ぃ…!」
「いい?」
「…ッ痛いんですって!」
「その痛いのがいいんだろ?」
ふるふると必死に首を振るのも新鮮でいい。
しかし。
「やらしいことがしたいって言ったのはお前なんだからな」
あと、軍人ならこれくらいの痛みには耐えろ。
…ううむ、我ながら理不尽だ。
案外しっかりとスイッチが切り替わっちまってるらしい。
こりゃ、本当にほどほどにしないと危ないな。
そんなことを考えながら、俺は古泉の手を左手で掴み寄せ、右手で指を取る。
「お前も分かるよな?指の可動域くらい」
「え……あ…まさか……」
「…大丈夫。折ったりはしないさ」
ニッと笑って、両手に力を込めれば、古泉の手の平が反り返る。
「…っ」
息を飲み、声を抑える古泉に、ご褒美だと更に力を込める。
関節が軋みそうなほどにしたところで、ぱっと手を離した。
「っは……」
苦しそうに息を吐く顔は、絶頂を迎えた時のそれにも似ている。
というか、あいつならこれだけでもイきそうで嫌だな。
本当にあの変態早漏野郎。
毒づきながら、こいつはどうだろうかと思う。
今どの程度興奮してるんだろうか。
俺は体の向きを変え、まだ放ったままにしてあったズボンのベルトに手をかけた。
…というか、最初は裸に引ん剥いてじっくり視姦しつつ、あいつとの比較対照でもしてやろうかと思ってたはずなんだがな。
どっちがこいつにとってはよかっただろうか。
カチャリと音を立ててベルトを外し、一気に脱がせるかそれともじわじわ脱がせていたぶるかと考えた挙句、焦らしを選択した。
そっちの方がまだソフトな気がしたからな。
前を寛げただけで、先走りの臭いが鼻をつく。
どうやら既に結構反応しているらしい。
「興奮してるな」
笑いながら指摘すると、
「…っ、はい」
と搾り出すような声がした。
「恥かしいのか?」
「…恥かしい、ですよ……。こんな…こと……」
「初めてだもんな?」
ひく、と古泉の腹が震えた。
「どうした?」
「…っ、なんでも、ありません……」
と答えた声が震えている。
もしや、と思って改めて古泉の顔の方を向いてやれば、綺麗な顔が見ごとに泣き濡れていて………うわ、やられた。
「…ああくそ」
「すみません…っ」
「いや、お前が謝る必要はないんだがな…」
泣き顔に興奮した。
しかし同時に、これくらいのことで泣くような、比較的純粋な奴に対して手を上げるというような真似が出来なくなってきた。
…こいつには部下たち含めた大所帯で世話になってるしな。
「…ええい、しょうがない」
俺は腹を決めた。
どうせ最初からそのつもりだったんだ。
今すぐにそうしたって構わんだろう。
「古泉、」
「は、い……」
涙で濡れた瞳を覗き込むようにして、俺は尋ねる。
「童貞、捨てたいか?」
「…え……?」
「…違うな。――俺が、お前の童貞、もらっていいか?」
「…え、えええ……!?」
だから今更驚くなって。
「やらしいこと、して欲しいんだろ?」
「し…たい、です、けど…そんな……」
「嫌ならいいが」
「い、嫌ではないです…!」
その間髪入れない返事。
お前、やっぱり素質あるわ。
「じゃあ、いいんだな?」
「…しかし……あなたは…」
「悪けりゃ言い出すわけないだろ。それとも、ああ、俺の古泉の心配か? 気にするな。あいつのことだ。泣いて喜ぶ」
ハァハァ気色悪いくらい呼吸を荒げるのが目に浮かぶ。
いや、気色悪いくらいなんてもんじゃないな。
気色悪く、だ。
ああ、げんなりする。
だがそのアホ面を思い切り蹴り飛ばせるのは楽しみだ。
「……ええと、好き、なんですか?」
「何が?」
「その…古泉一樹のことが、です」
「あいつに殴る蹴るの暴行を加えるのは好きだが、あいつ個人については気色悪いと公言している」
「……」
ぽかんとしているところ悪いが、それでもいいんだよ、俺とあいつみたいなのは。
「安心しろ。お前にまで暴行は加えられん」
その気が萎えた。
「え…?」
「だから、筆下ろしだけしてやるよ」
そう笑ってキスしてやった。
噛み付いたりしないし、苦しいほど深くもしない。
実に大人しいキスである。
万事この調子で俺がやってられるんだろうか。
疑問に思いながら薄目を開けば、至近距離に涙の川が見える。
……やれる。
これだけのことでこんなに泣くなら、これ以上なんてどうなるんだか見物ですらある。
そう思うだけで嗜虐心が疼く。
俺はいたって神妙に、胸の内で「いただきます」と唱えたのだった。


なんとか歯型やキスマーク以上の傷を残すことなくコトを終えられて、俺は満足と言うよりもむしろ安堵に息を吐いた。
変に緊張していたからか、全身にびっしょりと汗をかいて気持ち悪いくらいだ。
本当に、いい汗かいちまった。
古泉との行為の感想はと言うと、まあ及第ってところか?
気持ち悪さがない分、こっちも楽だったと言おうか。
あれこれ指示しても素直だったしな。
で、古泉の感想はどうなんだ?
こういうのを聞くのは基本的にマナー違反だとは思うが、こっちが受身なんだからいいだろうとよく分からない理屈で決め付けつつ、まだどこかぽやんとした目で天井を見つめている古泉の顔を覗き込んでやると、古泉が俺を見つめ返した。
「あ……」
「気分はどうだ?」
「…なんだかふわふわします……」
頼りない声だな。
苦笑した俺の首に腕が回され、頭を引き寄せられる。
しょうがないと笑いながら、俺は大人しく、されるがままに身を任せる。
ちゅっとくすぐったい音がして、触れるだけのキスは簡単に終る。
「感想は?」
「…気持ちよかったです」
「そりゃ何よりだ」
軽く声を立てて笑った俺は、もうひとつおまけみたいなキスをして、
「俺も、悪くなかったぞ。こういう普通のセックスも、たまには悪くない」
「…そうですか。では、」
どこか悪戯っぽく笑った古泉は、
「いつまでになるか分かりませんけど、こちらに滞在中は……なんて、だめですか?」
「…帰さない、なんて駄々をこねるなよ?」
「それは分かりませんね」
おいおい。
「…それくらい、あなたは魅力的なんですよ」
「歯の浮くような台詞を言うな。そういうのは女の子に取っとけ」
「ふふ……。ねえ、」
「あん?」
「……あなたが好きです」
「…古泉……」
驚く俺に、
「…初体験に逆上せ上がった子供の戯言だとでも思ってください」
と笑った顔が、切なげで。

――うっわ、こいつ帰り際に全力で振って、公衆の面前でぼろ泣きさせてやりてえ。

という恐ろしく悪逆非道な考えが脳裏を過ぎったが、だからと言ってそのためにわざわざここで、
「俺も好きだ」
なんて台詞を囁いてやるにはこいつがあまりにも真剣かつまともすぎた。
だから俺はその欲求をぐっとこらえ、ただ古泉の頭を撫でてやるに留めたのであった。
初体験の相手が男なら、せめて優しいお兄さんでいてやりたいものである。
…間違っても、サディスティックな変態ではなく。