姥桜(うばさくら)に伝わる話

姥桜(うばさくら)…乳母桜ともいう…に伝わる話
 
 松山城の西にある小高い山は、西山と呼ばれている。西山の麓に国宝建造物のある大宝寺がある。
 大宝寺本堂の前にある桜の木にまつわる話。(国宝建造物=大宝寺本堂)
 
 
 昔々、角木長者といわれる長者がいた。長者は子供に恵まれず、大宝寺のお薬師様に「子供が授かりますように」と願かけをした。この願いが叶い女の子が生まれ、名を「るり」と名付け乳母が大事に育てていた。ある日、乳母の乳が出なくなり子育てに難渋していた。子供を授かったお薬師様に願ったところ、やがて乳母の乳も元通りになり、お礼に本堂を建立したという。

 娘は成長し15歳を迎えた頃、重い病になり、乳母は「我が命に代えてでも、るり様をお助け下さい。」と大宝寺のお薬師様にお祈りをした。その甲斐あって、るり姫は平癒し元気を取り戻したが、乳母の身体は衰弱し、お薬師様との約束事だと言って薬も口にせず「お薬師様のお礼に、桜の木を植えて下さい。」と言って死んでしまった。長者は乳母の真心を思い、桜の木を本堂の前に植栽した。

 桜は成長し花の咲く時期になると、母乳のような色の見事な花を咲かせているという。それで、この桜は【姥桜】【乳母桜」と呼ばれている。
 
この話は、小泉八雲(ラフカデェオ・ハーン)の「怪談」にも収められている。

   (地図)松山市南江戸 大宝寺

大宝寺 姥桜(本堂手前の樹木) 大宝寺 姥桜(本堂右手の樹木)