大昔のこと、《小千(おち)の高縄》という人がいた。ある日のこと大三島様にお参りをすると「汝の居所は我が指南のところへ移すべし。是むくの浄土にして愛比売(えひめ)の臍(へそ)なり、我、常にその地に遊べり」と神様のお告げがあった。
そこで、神のお告げに従い風早の地の五明の郷に仮住まいをして、朝夕この辺りで一番高い山を見て暮らしていた。
ある夜のこと小千の高縄は、この山の頂上辺りに真っ赤に燃える火の玉を見た。火の玉が呼んでるように思えたので小千の高縄は、険しい山路をまっしぐらに一心腐乱にかけ上り、何処か見知らぬ場所で気を失ってしまった。どれくらい時間が経過していたか解らないが気がついた時には、足元からコンコンときれいな清水が湧き出ていた。小千の高縄は、ここが神のお告げの土地に違いないと思い、住居を建てて住みついたという。
この山を自分の名前をそのまま充てて【高縄山】とよんだという。また、清水の湧き出した所を『水神様』として祠が残っているという。