四国88ヶ所霊場・第52番札所【太山寺】にまつわる話
豊後の国(今の大分県)の真野長者は広大な土地と沢山の金を持ち何不自由なく暮らしていた。
ある年、長者の一人娘の般若姫が京の都へ行くこととなり、途中の周防の海で嵐にあい船が沈没して一人娘は死んでしまった。
周防(今の山口県)にて娘の弔いを終え、長者は都へ再出発し、船が備後の鞆の津(とものつ)に差し掛かったところで嵐に見舞われた。
帆柱は折れ、舵も流され荒波に吸い込まれそうになったが、長者は一心不乱に観音に拝み続けた。すると不思議なことに、遥か彼方の瀧雲山(りゅううんさん=太山寺山)の頂上辺りが五色の美しい雲となって光輝き、船を導き、長者は高浜に漂着した。
それから豊後に帰った長者は、命を助けてもらったお礼にと寺の建立を思い立った。
船いっぱいに木材を積み出発し、高浜に着き、明日は寺の建立場所を探そうとその晩ぐっすりと眠った。
目覚めてみると船に積んだ木材が一本も無くなっており、あちこちを探し回った後、瀧雲山の頂上まで行って見ると驚く事に大きな寺が出来上がっており、長者が持ってきた木材が使われていた。
一夜にして寺が建立されたという不思議ないいつたえである。
太山寺 |