11 | 「へちま」考 ―「へちま」は日本語、外来語、落語 ? ―― |
以下の「へちま」に関する記述は、平成30年松山子規会五月例会(20180519) での講話「生死の執着と安心 〜一遍と子規と〜」の休憩タイムに会員の息抜きの為に話した資料である。糸瓜についての基礎的な内容は知らない人が多い。参考になれば幸甚である。 キュウリ 胡瓜 木瓜 黄瓜 ヘチマ 糸瓜(いとうり) 東(唐)瓜(とうり ) 天糸瓜 カボチャ 南瓜 スイカ 西瓜 水瓜 ヘチマ(糸瓜、天糸瓜) 学名:Luffa cylindrica (L.) Roem. インド原産のウリ科の一年草。また、その果実のこと。日本には室町時代に中国から渡来した。 中国最古の医書『神農本草経』(2〜3世紀)に記載なし。 一五九五年『羅葡日対訳辞書』および1604年の『日葡辞書』にヘチマ(Fechima葡語のローマ字)で出ている。 一六九七年『本朝食鑑』等に糸瓜と書いて「へちま」と訓じるとある。 本来の名前は果実から繊維が得られることからついた糸瓜(いとうり)。 これが江戸時代の『物類称呼』に「とうり」と訛った。「と」は『いろは歌』で「へ」と「ち」の間にあることから「へち間」の意で「へちま」と呼ばれるようになった。 沖縄では「へちま」はナーベーラーと呼ばれるが、これは果実の繊維を鍋洗い(なべあらい)に用いたことに由来するという。沖縄の「ナーベーラー田楽」という料理は、ゆでた糸瓜に黒芝麻(hei zhima)をかけたもので、呼称が違い説も有力である。 【言海】明治三七年二月 大槻文彦著 ヘチマ絲瓜 [蛮語ナリト云、詳ナラズ。或云、絲瓜ヲ約メテ、とうりトモイフ、とは伊呂波歌ニテへトちトノ間ナレバイフト、強索ナラム](略)美人水の名アリ。絲瓜水 【広辞苑】 へちま【糸瓜・天糸瓜】ウリ科の蔓性一年草。熱帯アジアの原産。茎は長く、巻鬚まきひげで他物にからみつく。葉は掌状で3〜7に浅裂。夏、5弁の黄花を開く。雌雄同株。果実は円柱状で若いうちは食用、完熟すると果肉内に強靱な繊維組織が網目状に生じ、これをさらして汗除け・垢すりなどに用いる。唐瓜とうりともいい、「と」の字(いろは順の「へ」と「ち」の間)が名の由来という。「季・秋」。〈日葡辞書〉つまらぬもののたとえ。へちまのかわ。一休狂歌問答「世の中は何の―と思へども」 『散策集』明治二八年(1895)九月二十日 「五六反叔父がつくりし糸瓜哉」 (注)へちまの活用先は化粧品(化粧水)である。明治二〇年代から白粉とお歯黒が廃れた背景を承知すべきであろう。明治期の一家庭で「へちま」を植えるのは一般的なこと。 |