2001年「単線」







ネクタイのゆるき結び目成人式

春浅し子の耳朶の赤きこと

   抱き上げて身の軽きかな恋の猫


うれしくて只うれしくて桜見る

   ふうと吹くしゃぼんの玉のふたつみつ




   











単線に一駅ふえて夏祭り

 こぼれたる白の記憶のアマリリス

 ドアノブのライオン睨む夏館

 ほうたるの光をそつと手で包み


 屋根覆ふ如くブーゲンビリア満つ







猫に会ひとんぼうに会ひ坂の街

白波の騒ぐ漁師の秋祭り



 風つかむ羽の軽さや赤とんぼ

   オカリナの風ゆきかひて野路の秋

   木犀のかほり連れ来る回覧板

風遊ぶ里の廃線赤とんぼ


   アイロンのすべる軽さや秋うらら

   無骨なる手の自転車屋柿熟るる

   靴紐をきゅきゅっと結び秋の旅


朝寒や胸の奥から咳一つ














冬うらら京の干菓子のはんなりと

   木枯しやサッカーボール追ひし子ら


シーツ干し端を掠める冬の翳

   干し柿を揉みてやさしい甘さかな

   白い息つれて駆けてくランドセル


   カーテンの向こふまつすぐ冬木立

  マフラーに気持ち半分埋めゆく