2000年「十六歳」



















春の日やスーツ姿の子の背丈




   土触り土混ぜてをり風光る

   荷造りをしつつ回顧の春日かな



   春電車乙女の頬の透きとほり



    薫風や竿竹売りの声響き

   風鈴やみちのくの音江戸の音


   逢ひたくて目深にかぶる夏帽子

   炎天や十六歳といふ一瞬











   子にひとつ夫にひとつと梨をもぐ


   蟷螂の子は子にみあう鎌を持ち

   幸せはちっぽけなこと秋刀魚焼く









冬晴れや造影剤の影白し


   短日やクリックごとに闇迫る

   愛らしき耳の付たる冬帽子



   幸せもほどほどなれば去年今年