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会う事はできへんわ……今のかんちゃんはじ
め同級のみんなにも会いたいわ。それから少
年院時代の親友のバルボンにもなあ。あいつ
どこでどう調べたのか手紙寄こしてきて、松
山でちんけな印刷所しとるけん、帰ったら寄
っててくれ言うんや」
「バルボン?なんでっしゃろ、その人」
「昔バルボンいうて中南米出身で、プロ野
球の阪急におった選手そっくりやったから、
その渾名(あだな)で呼ばれとったんや。わ
しと同じ暴れ者じゃったが、立派に立ち直っ
て堅気の生活しとるんじゃろのう」親分にと
っては、自分が挫折したことを成し遂げた友
への尊敬の気持ちが満ち溢れていた。
「その向うの大きな樹が繁っとる所が護国神
社じゃ、神社の前を右折して鳥居を潜って、
日赤の向うの踏切を越して、大きな通りに出  6
たら又右折やぞ」
「へい。親分二十四年振りでも、路(みち)
よう覚えてはりまんなあ」              
「あたりまえや、ここらはわしの庭じゃった
けんのう。ここやここの神社の奥の万葉の
池の辺りで、バルボンらと喧嘩して察に捕ま
ったんや」親分は懐かしそうに神社を見渡し
た。若者は車を止めたが、やがてゆっくりと
発進した。そしてすぐに右折して参道に入っ
た。親分は後ろを見ながら呟いた。
「ちっとも変ってないわ」そして前方を見た
途端、親分の顔は豹変していた。
「おおっ、これがわしが行った中学校や、ほ
んで隣が小学校や。わしには関係ないけど
前が大学や。かんちゃんここの教授しとるん
やろか、それとも西側の私大の方やろか?
なんや、木造校舎がないようになって、こんな
とこに体育館ができとるがな。正門入ったとこ