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  富田 狸通

たぬきの名称

 狸は一名を狢(むじな)といい、また団三(だんざ)ともいわれている。これらは地方によっての呼び名であるが、更に古書による「たぬき」の別名を拾ってみると随分多くの変わった異名で登場している。

 その主なるものに、

   くさいなぎ(八雲御抄)

   多々介(本草和名鈔)

   多々計(紀伊風土記)

   多々毛(医家千文字詩)

   太奴木(倭名類聚抄)

   手貫(倭訓栞)

   たまき(倭名抄)

   十文字(佐渡志)

   野猫(和漢三才図絵)

その他、八文字、田猫、田の怪、魔魅、寅日、伏獣、令長、称古等がある。

 また古歌には「すがたのむし」「みそねぶり」の異名もあるが、今でも伊勢の一地方では「みそねぶり」と言っている。紀伊では「あなっぽ」また伊予では「まめたぬき」と言うが、讃岐では「まみたぬき」と呼んでいる。

 「たのき」と言うのは松山近辺の方言かと思っていたら九州地方でも「たのき」と言う。

 古い本を見ると伊予の「しぱたり」とあるが、これは土佐の「しばてん」のことだと思う。狸伝説の少ない土佐では天狗と河童の合いの子のような仮想動物を「芝天」と言って相撲に強い伝説がある。

 なお支郡では虎僕、風生獣、不来、田参単、狢子(ほっし)等の字が使われており、また風狸、香狸、家狸、宝狸、噛狸.九節狸、訓野狸、玉面狸、遜狸、文狸、菓子狸等の名称があるが、これはいずれも狸の字をで表わしておるから、その実は猫や犬のことで、尤も支郡には日本に棲む原始動物の狸は少ないので、狸によく似た動物でが棲んでいるが、これは日本の穴熊であると書いてある。