「縁」 |
この話は臨済宗の「縁」と言う本の受け売りです。 坊主の受け売り話をひとつ。 これをもって口耳の学と言われそうですが? 古くから日本に伝わる臨斉宗(禅宗)の教えには、現代にも通用する貴重なものが沢山あります。 近ごろよく思い出す言葉に「遠きに行くに必ず近くよりす」という一節があります。 その意味は、次のようなことであったと思います。 「遠方に行こうとするなら、必ず近いところからその第一歩を踏み出せ、学問や道徳に限らず何を始めるにも、日常の事から始めるのが順序である」 原文は君子の道は、例えば遠きに行くに必ず近くよりす。 例えば、高きに登るには必ず卑きよりするが如し。 また、こんな言葉もあります。 道は近きに在り、而るに諸を遠きに求む事は易きにあり、而るに諸を難きに求む この意味は、 「人の道はごく手近な日常生活のなかにある。そのことを忘れて人はともすると高遠なものでないと人の道でないように錯覚する。 また、人としてなすべきことは行いやすいところにあるのに、人はとかく難しいことをしたりおこなわないと論理や道徳でないと考え違いをしているようだ」 この教えの例として次のようなたとえ話があります。 ある金持ちが、大工の頭領に「三階建ての家をつくれと」と命じます。頭領は基礎工事をしっかりしてから一階の建造に掛ろうとします。 それを見てその金持ちは大変怒って、「基礎はいい加減でいい。すぐに3階をつくれ」とせきたてた、というのです。 低きより高きに及ぼすことを抜きにして、一足飛びに三階があり得るわけがありません。 我々現代人はせっかちですから、とかく足元をおろそかにして先を争い功をあせることは、この寓話の金持ちに似ています。 笑ってすませない話だと思います。 |