痰一斗糸瓜の水も間に合はず
をとゝひのへちまの水も取らざりき
あたたかな雨が降るなり枯葎
氷解けて古藻に動く小海老かな
大砲のどろどろと鳴る木の芽かな
涼しさや松這ひ上る雨の蟹
蓮池の浮葉水こす五月雨
汽車過ぎて烟うづまく若葉かな
半日の嵐に折るる葵かな
月も見えず大きな波の立つことよ
蔦さがる岩の凹みや堂一つ
糸瓜咲て痰のつまりし仏かな