山頭火 ふくろうの句
「とにかく女といふものは」ふくらうがなきます

かたむいた月の ふくろうとして

ぎゃあとなけば ほうとなくふくらうの夜で

暗さ、ふくろうはなく

傾いた月の ふくろうとして

恋のふくらうの 冴えかへるかな

恋のふくらうの 鳴きさかるだけの月

冴えかへる月の ふくらうとわたし

死ねないでゐる ふるつくふうふう

ふくらうがふくらうに 月の冴えかへる
旅の月夜のふくろう啼くか

月あかりの ふくらうの啼きうつる

月がのぼれば ふくらううたひはじめた

月がまろくて 恋のふくらう

ふくらうがよびかける 声をきいてゐる

ごこかでラヂオが ふくろうがうたふ

春の夜のふくろうとして二声三声は啼いて

火の番 そこから遠ざかるふくらう

昼はみそさざい 夜はふくらうの月が出た

ふくろうないて ここが私が生まれたところ
ふうつくふうふう酔ひざめのかえあだよろめく

それからそれへ考えることの ふくろうのなきうつる

誰も来ない月はさせども ふくらうなれども

ふるつくふうふう 月がのぼる

ふるつくふうふう どうにもならない私です

身にちかく ふくらうがまよなかの声

ほんにお山は しずかなふくろう

ふくらうはふくらうで わたしはわたしでねむれない

ふるつくふうふう 逢ひたうなった
ふるつくふうふう 月をかたむける

ふるつくふうふう わたしはなぐさまない

ゆうべはさむい ふくろうのにごったうた

ふるつくふうふう ぢっとしてゐられない私です

ふるつくふうふう あてなくあるく

ふるつくふうふう いつまでうたう

ふるつくふうふう お月さんがのぼる

ふるつくふうふうと ないている

よっぴて啼いて ふくらうの月