MY EASSY
・ヘミング・フジコ
数奇な運命を辿ったピアニスト、フジコさんをはじめて知ったのは今から5年程前に
放送されたNHKの番組からだった。それは人知れず東京の片隅で生活され
不思議な人生を辿ったピアニストという設定でのドキュメンタリー番組であり
それはピアニスト、フジコ氏の衝撃的なデビューだったと思う。
僕はそんな番組であることなどいざ知らず、テレビを背に夕飯を食べながら
聞いていた。すると背筋がぞくぞくするほど美しく歌われたピアノが聞こえてくる
ではないか。直感的にこれは有名な外国のピアニストに違いないとテレビの方へ
振り返ると、その画面には見知らぬ初老(失礼)の女性ピアニストが演奏しているではないか。
その時、こんなに素晴らしい才能をお持ちの方なのに本当に気の毒だなと思った。
しかし数日のうちに全国からの視聴者の反響は大変なものだったらしい。
フジコさんの名前は瞬く間に知れ渡った。やはり全国には私と同じように心を動かされた人が
沢山いるのだと感じた。
この人のピアノは良く歌う。しかもそのフレージングは日本人的なものではなく
外国語を母国語に持つ非常に洗練された歌い回しを感じる。
更に、何よりも特徴的なのは、まるでギター(弦楽器)のようにピアノを弾いていることである。
ギターを弾く僕たちが最近ピアノ的に演奏しようとしている現代にあって、逆に
こういう演奏を聴かされると忘れてしまったものを
思い出させてくれるような感じがする。
想像を絶する人生の経験を積みその苦悩や困難なところから湧き上がる魂の歌を
奏でるフジコさんは僕のもっと好きなピアニストです。
どうかあまりメジャーにならないで今のまま、素晴らしい音楽を奏でてください。
貴女には大ホールの舞台よりも小さいサロンでの演奏が似合います。
それは決して悪い意味ではなく心に染み入る音楽とは吐息の聞こえるより
個人的な距離から生まれるものと思うからです。