さいとうよし子ちゃんのボール 第二球「ごまめちゃんの涙 最終章」 

「ボール君、ごまめ、ほんとうにおかあちゃんに会えるのかな」
「どうしたんだよ。そんなこと言って、これからごまめちゃんのおかあさんに会いに行く んだよ」
「あの岬におかあちゃんはいるのかな?」
「行ってみないと分からないけど、今度こそごまめちゃんのおかあさんに会えるよ」
「そうだといいのにな」
「大丈夫だよ。ごまめちゃん、心配ないよ」
果てしなく続く水平線が少しずつ明らんできた。そして岬は赤く染まり、朝日は静かにし かし力強く昇り始めた。
「ボール君、おかあちゃんが見えるよ」
「どこにいるの?ごまめちゃんのおかあさん」
「ほら、あそこ」
「ごまめちゃん、あれはお日様だよ」
「違うよ。あれはおかあちゃんだよ。おかあちゃんは真っ赤にもえているんだよ」
「ごまめちゃん、ごまめちゃんのおかあさんは真っ赤な太陽なの?」
「ボール君、ごめんなさい。ごまめのおかあちゃんは、おかあちゃんはごまめを生んです ぐに死んじゃったんだって、おとうちゃんが言ってたの。でも、ごまめはそんなの嘘だと 思っていたんだ。だから、ごまめはおかあちゃんを探しにきたんだ。それで、ボール君に すぐに出会って、北の海からここまで探しにきちゃったんだよ。
でも、ごまめは思い出したんだ。ごまめのおかあちゃんはあの真っ赤な太陽だって、おと うちゃんが言っていたことを今、思い出したんだ・・・・・」
「そうだったんだ。ごまめちゃん、ごまめちゃんのおかあちゃんはお日様だったんだ。 でも、おかあちゃんに会えてよかったね。
ごまめちゃんのおかあちゃんは、いつもごまめちゃんをニコニコしながら見守ってくれて いたんだね。だってお日様だもん」
眩しい光とともに朝日が水平線の彼方から姿を現した。それは温かくやさしく微笑んでい るようで,母の想いが伝わってきた。
「おとうちゃんが心配しているから、ごまめ、ここからお家に帰る。ボール君、嘘ついて ごめんなさい。おかあちゃんを探してるって嘘ついて、ごめんなさい」
「そんなのいいんだよ。ごまめちゃんはほんとうにおかあちゃんを探していたじゃないか。 そして、今、会えたじゃないか」
ごまめちゃんの涙がぽろり、ぽろりと光り輝きながら流れ落ちた。
そしてごまめちゃんはボール君に抱きついた。
「ボール君、ありがとう。さようなら」
「僕、送っていくよ」
「ありがとう。でも、ボール君はよしこちゃんに早く会いたいんじゃないの」
「会いたいよ。よしこちゃん、どうしているのかな?でもね。僕はごまめちゃんを送って いきたいんだよ」
「ボール君、ありがとう」
「ごまめちゃん、僕はごまめちゃんと一緒にいられて楽しかったよ」
「それ、ほんとう。ごまめもボール君が傍にいてくれてとっても楽しかった」

そして、二人は朝日に照らされながら、外海の岬に向かった。
すると「ごまめ、ごまめ」と沖のほうから誰かが呼ぶ声が聞こえてきた。
「ごまめちゃん、聞こえた?誰かがごまめちゃんの名前を呼んでいるよ」
「うん。聞こえたよ。その声はきっとおとうちゃんだ!おとうちゃんが迎えに来てくれた んだ」
「ごまめちゃんのおとうさんが呼んでいるの?」
「そうだよ。ボール君、おとうちゃんだよ」
ドドーと勢い良く波が上がった。するとブルブルと黒い大きな身体のアザラシが現れた。 「おとうちゃん」
「ごまめ、ごまめじゃないか」
「ごまめ、おかあちゃんを会えたよ。ほら、おとうちゃんが話してくれたように、おかあ ちゃんは真っ赤な太陽だ」
「そうか良かったな。ごまめ、おとうちゃんと一緒にお家に帰ろう」
「ウン。お家に帰る」
「ごまめちゃん、おとうさんが迎えに来てくれてよかったね」
「ボール君、ありがとう」
「ごまめちゃん、さようなら」
「ボール君、さようなら」

さあ、ボール君はよしこちゃんのところに急げ!
                                               終わり