さいとうよし子ちゃんのボール 第二球「ごまめちゃんの涙NO.8」 

その時だ。
ボール君はヘドロお化けの大きな口の前で、おもいきり跳ねた。
ビューンとへドロのかたまりの背中に乗ると、もう一度おもいきり跳ねた。
そして、岩影にポンポンと転がった。
「ボールが生意気なまねをしたな!」
ヘドロお化けは眉をしかめて目を吊り上げて口からぴゅーぴゅーと汚物を吐きながら、、 ゆっくりと動き出した。
しかし洞窟が急に狭くなり身動きがとれなくなり、行ったり来たりしているとボール君を 見失ってしまった。

洞窟の中にいるはずのごまめちゃんの姿が見つからないまま、ボール君は細くなっている 洞窟の奥へと転がっていった。
「きっと、この先にごまめちゃんと、お母さんがいるんだ。助けなきゃ」
ボール君はピョンと軽く弾みなが狭い洞窟の壁づたいに進んでいった。きっとこのまま進 んだら、広い洞窟に行ける。
そしてボール君は波の微かな音を頼りに岩場を思い切り跳ねた。
先に明かりが見えてきた。
「ボール君」とごまめちゃんの呼ぶ声が洞窟を木霊した。
「ごまめちゃん」とボール君は大きな声を上げた。
もうすくだ。もうすぐ、ごまめちゃんにあえるんだ。ボール君はごまめちゃんの声がする ほうに急いだ。
明るいほうに明るいほうへとボール君はころころと転がりながら進んだ。そこにごまめち ゃんが待っていると信じていた。 しかし、ボール君が月明かりに照らされている内海に出てみると、ヘドロお化けがごまめ ちゃんをぐるぐる巻きにしていた。
「ごまめちゃん」とボール君は叫んだ。
ヘドロお化けは得意げにボール君に言ってきたのだ。
「どうした坊主。俺様に勝とうと思っているのか」
「ごまめちゃんを放せ。ヘドロのお化け」
「なんだ。生意気なことを言って、お前も一緒に食べてやるぞ」
生臭い匂いがいっそう強くなってきた。ボール君はどうにかしてごまめちゃんを助け出さ なければ考えた。しかし、ヘドロお化けはごまめちゃんを放そうとはしない。
「ごまめちゃん、大丈夫だよ。今助けるからね」
「ボール君、苦しいよ」
ごまめちゃんの悲しい叫び声が洞窟の中に木霊した。
すると、内海の対岸の洞窟から大きな波がうねりを上げて押し寄せてきた。
その白波の中から黒い四足の動物が鋭い刃をむき出しにして、ヘドロお化けのくびに向か って噛み付いた。
ボール君はすぐにロボット犬のフラットさんに気がつくとヘドロお化けにぐるぐる巻きに なっているごまめちゃんを助け出した。
「グワー。苦しいよ。助けてくれ」とヘドロお化けは声を上げた。
そしてロボット犬のフラットさんにずるずると岸に引っ張られるようにヘドロの化け物は 動き出した。
「フラットさん、助けてくれてありがとう」
「ごまめちゃんが助かってよかったです。ボール君がヘドロの化け物に立ち向かってくれ たおかげです」
フラットさんは砂浜にヘドロの塊を引き上げると、海のパトロールに戻っていってしまっ た。ヘドロの化け物は太陽を浴びると干からびて、清掃局の人たちによってかたずけられ るのである。
ぼーる君はごまめちゃんの身体をさすりながら、心配した顔で「ごまめちゃん、大丈夫か い」と聞いてみた。
「ボール君、私助かったのね。とっても怖かったわ」
「もう大丈夫だよ。ロボット犬のフラットさんが化け物を退治してくれたからね」
「すごく臭い化け物だったね。それに黒くてヌルヌルしていてとっても気持ち悪いんだ。 ごまめ、とっても気持ちがる苦なっちゃった」
「ごまめちゃん、まだ気持ち悪い」
「もう大丈夫だよ。ボール君」
「ごまめちゃん、お母さんに会えたのかい?」
「まだ、おかあちゃんに会えないよ」
「お母さんはどこにいっちゃったんだ。ごまめちゃんがここまで探しに来たのに」
「おかあちゃんはここにきっといるよ」
「この先にある岬を探してみよう」
二人は身体を休めることなく内海から外海の岬に向かった。