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42ND STREET(フォーティーセカンド・ストリート)No.8 この沈黙が不吉な予感をさせたのだ。姉が車に跳ねられ足を切断した時と同じ生温かな 風が吹いた。私は息苦しくなって、胸をおさえた。 「シュウ、ほんとうに店を辞めるの?」 「あぁ、辞めるよ」 「あんなに辞められないと言っていたのに、どうして?」 「気が変ったのさ!ただ、しばらくはヨーコと逢えなくなるけど・・・」 「逢えなくなるって、どういうこと?」 「ほんの二ヶ月だよ。ヨーコのヨーロッパ公演を観に俺は必ず行くよ」 「そんなこと先のことでしょう。それよりもシュウがいなくなっちゃうなんて嫌よ」 「仕方ないだろう。店を辞めるからには、この街にはいられないンだ。ヨーコと別れるの は辛いけど、必ず42NDを見に行くよ」 「ヨーロッパに行くことができないくせに、なぜそんなこと言うのよ」 「グリーンカードが手に入れば、俺はヨーロッパだって日本だってどこにでも行けるさ」 「どうやってグリーンカードを手に入れるのよ。そんなに簡単に取れないはずよ。アメリ カ人と結婚でもしないとかぎり、無理でしょう」 「そんなことしなくても手に入るンだ。ヨーコは心配しなくて大丈夫だよ。必ず、ヨーコ を迎えに来るから」 「そんなことしなくていいわ」 「ヨーコ、大丈夫だよ。心配ないよ」 私はシュウが偽装結婚をしてグリーンカードを手に入れようとしているように思えた。そ う、思うとシュウが何を言っても私の耳には入らなかった。シュウはそんな私の手を握り 締めながら、意味のない言い訳をはじめた。そして、こう言ったのだ。 「ヨーコ、必ず帰ってくるよ。だから、待っていてくれ」 私は急に不安になってシュウの首に腕をまわした。そして、彼の髪を触りながら現実を見 ようとした。 「シュウ、ねぇ、どこに逃げるの?」 「シカゴかシアトルだよ」 「そんな遠くに行くの。そんな遠くなら、店を辞めないで私の傍にいてちょうだい」 「ヨーコ、なに言っているンだよ。そんなこと今さらできないよ」 「どうして、どうしてできないの?」 「もう、決めたンだ」 「別れるなんて、嫌よ」 「少しに辛抱だろう。二ヶ月なんてすぐだよ」 「シュウ、偽装結婚なんて絶対にしないで!」 「なんだ。そんなことをヨーコは考えていたのか」 「偽装結婚なんてしないよ。だから、俺を待っていてくれ」 そう、言うとシュウは泊まらずに帰った。 私はどうしても納得いかなかった。シュウが話さなかった真実を知りたくなっていた。 そして、ベッドに横になりながら香織のことを考えてた |