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さいとうよし子ちゃんのボール 第二球「ごまめちゃんの涙NO.3」 春一番は穏やかな海にうねりを起す。高い波がザブンザブンと防波堤にぶつかり白い泡 となって消えていく。こんな時には、しっかりとごまめちゃんにつかまるンだ。そうしな いと西風に流されちゃうから、ボール君は気を引き締めた。 「もうすぐ、多摩川が見えるよ」 「ほんとう。うれしいな」 とごまめちゃんはピョンピョンと身体を上下させて泳いだ。 「ごまめちゃん、お母さんに会えるといいね」 「うん。もうすぐ、おかあちゃんに会えるンだね。ボール君」 「ここから、行くと多摩川だ。川に入ったら、そのまま進んでね」 「でも、この風とっても強いよ。ボール君」 「それじゃ、少し潜って行こう」 多摩川の下流には大きな鯉がたくさんいた。 「そこのお嬢ちゃん、珍しいねぇ」 と一匹の大きな鯉のおじさんが声をかけた。 「おじさん、こんにちは。あたし、おかあちゃんを探しにきたの?」 「お嬢ちゃんは、おかあさんを探しているのかい」 「おじさん、アザラシ、ゴマフアザラシを知りませんか」 「タマちゃんと呼ばれているアザラシなら、この先の大きな橋の下にいるよ」 「タマちゃん?おかあちゃんはタマちゃんじゃないけど、そのタマちゃんがきっとおかあ ちゃんだ。うわー、おかあちゃんに会えるンだ。おじさん、ありがとう」 ごまめちゃんはうれしくてボール君を忘れて泳ぎ出した。 「ごまめちゃん、待ってよ。僕をおいて行かないでよ」 「ボール君、ごめんなさい。早くおかあちゃんに会いたいンだもん」 「わかったよ。でもそんなに急ぐとあぶないよ」 多摩川の浅瀬には鷺が数羽、優雅に歩きながら嘴でツンツンとつついて餌を捕っていた。 そんなのんびりとした光景が続く中、ごまめちゃんがぐんぐんと力強く泳ぐすがたがあっ た。そして、終に大きな橋の下に着いた。 「鯉のおじさんが言っている所ってここなの?ボール君」 「そうみたいだね」 「おかあちゃん、ごまめが迎えにきたよ。おかあちゃん」 とごまめちゃんは声を上げた。 「ごまめちゃんのおかあさん」 とボール君も呼んでみた。 「おかあちゃん、おかあちゃん」 とごまめちゃんは橋のまわりをグルグル泳ぎながら、呼 び続けた。しかし、ごまめちゃんのおかあさんは現れなかった。それでもごまめちゃんは、 泣きながら 「おかあちゃん、おかあちゃん」 と叫びつづけた。 いつまでも呼んでも、ごまめちゃんのおかあさんは姿を見せなかった。 「おかあちゃん、どこに行っちゃったのかな?もっと上流に行ったのかな」 「もう少しここで待ってみようよ。ごまめちゃん」 「そうだね。おかあちゃんはここに戻ってくるよね。ボール君、うぅ、うぅ・・・」 「ごまめちゃん、泣かないよ。おかあさんにもうすぐ会えるンだからね」 「だって、おかあちゃんいないよ」 「今いないだけだよ。必ず戻ってくるよ。ここに」 ごまめちゃんは夕焼け空を見つめながら、もうすぐ会えると大好きなおかあちゃんの顔を 思い浮かべた。 「クスン。おかあちゃん」 |