エッセー・ 風の凡語  1985年刊
インドの風景とダブる我が人生記
定価  1500円
 九年何カ月前、インドを訪れたときも、得体の知れぬ彼の地を、映画でいかに撮るかで思案した。
 結果、「風」をモチーフにしよう。
 なまじっかな知識をひけらかした作品よりは、すべては風まかせで描く。
行く先ざきの、すべてに関わる風をとらえよう・・・・・・・
 空わたる雲、 菩提樹の葉ずえ、 モスクの風鐸、 風の歌う唄もある。
予測していた情景にも恵まれ、ネライに誤差はなかった。
むしろ、現地ならではの、望外の収穫でふくらんだ。
 もみ殻を選ぶ風、 風化に摩かれた石像。
 風の如く来り、風の如く去ったインドで、映画的な世界を発見することができた。
 作品「デッカンの風」は、斯くして誕生した。
 冬、インドの季節風は、陸から海にむかって吹き出す。大陸の南端、コモリン岬の天空に、二本の帯となって横たう雲が、それを証明する。
 「風の凡語」では、インドの風土、風俗、風物、風習をどこまで表出できるか、はなはだ心もとない。
「よろず生きとしいけるもの山川草木
     ふく風たつ浪の音まで念仏ならずといふことなし」     (一遍語録)
 小著出版にあたりましては「同行新聞」発行者大本弘章氏、本書を一遍会双書にお加え下さった一遍会の皆様、さらに監修ならびに校閲にご尽力賜りました一遍会幹事越智通敏氏、畏友村上峰保氏、そして出版のお世話をいただきました青葉図書村上勉氏そのほか多くの方々のご厚情に心から御礼を申し上げます。

上田雅一
第一章
 思いはいつもインド
色褪せず
パスポー ト
印度の印画
旅の肖像
狼籍もの
ミトゥナの美
贋飛鳥仏
明眸
絵の経歴
風呂瞥見
狐憑き図
脚下照顧
無我失念
真偽不問
かわたれ星
第二章
 印度 の風だより
能書き
酒の気
なびく煙
こだまホール
歯な詩
薬味
茶のかおり
不信電信
水兵通信
国際郵便
仮名便り
記憶忽忽
駅前広場
むすめ遍路
旅に死す
第三章
 残像におびえる
名機ありき
解説台本
狸通氏熱演
謎のひとこま
キャラクター
トロフィー落下
活動写真
松之助ロケ
カメラマン失踪
霧中無残
フィルムの行方
日米合作映画
第四章
 風紋は消えず
時代相変化
明治写真館
将棋の駒
菓子あきない
孫六の女房
歌碑拓本
保険受取人
遺書
時空の彼方
第五章
 「聖絵」 のこころ尋ね
聖絵の人々
行脚のあと
踊り考察
繧繝(うんげん)絵巻
「一遍絵伝」解説稿
英訳「一遍絵伝」
私考
伊予の南朝と時宗の系譜