第87回 天地あべごべ
40年前に撮った「くらしきの川」についてはこのコラムの84回でも書いたが、このほど白鳥正夫氏の「関西文化考」(2005年8月5日号)「わがシネマ人生に悔いなし」でも「カメラを逆に構えて撮った川面」と再録されたので重ねて注釈めいた事を書き添える事とした。
 映画表現として、まやかしの芸当めいたテクニックを弄したと解されるかも知れないが、作者としては苦肉の策でもなければ、奇抜さを狙った「外連」(けれん・はったり、ごまかし)でもなかった。
 その当時の町並みをそのまま写し込んだ川の水面、その「絵姿」を天地逆さつまり、アベコベでなく、まともな姿で映したくて案出した「技法」であった。
 今にして見れば、「水鏡」に映る昔が「揺れ動く」と思えるではないか。
上田雅一のシネマなページ