第47回 『中平康監督』
 十七回忌を迎えた石原裕次郎が現世の人々を騒がせている。太陽族の時代に騒ぎ立てられた彼が、現在ただいま尚「人気」がすたらないのは何故か。
 昭和三十年の初め、兄慎太郎の初脚本、中平康監督第一作の「狂った果実」で映画界に躍り出た裕次郎はその後、「俺は待ってるぜ」、「嵐を呼ぶ男」と世評を呼んだ。
 一方、中平監督の特異な作風はフランスのゴダールに影響を与え、ヌーヴェル・ヴァーグ作品「勝手にしやがれ」を創出させた。
 土佐の絵師絵金を撮った「闇の中の魑魅魍魎」のことは、このコラム第十八回「絵かきの絵金」で記述したが、このほど同フィルムから遺影を複写したのでここに掲載して追悼の意を表する次第である。
 当時の日記によると、高知の赤岡町の街角に立て広げた芝居の屏風絵を鑑賞する監督、また、絵金の孫弟子吉川家に伝わり残された白描を仔細に見つめるカットも今となっては貴重な一シーンなのである。
 撮影時は異なるが、土佐朝倉神社境内をたずねきて、絵馬台の芝居絵を見上げる横尾忠則氏らの映像も作品フィルムの中にあるはずである。
上田雅一のシネマなページ