第40回 『名作残る』
 「一遍インド遊行の図」をコラージュ戯作して『一遍聖絵』の筆者円伊の秀抜たる腕の冴えに改めて感服させられた。永い歳月を経た絵巻ものながらもカビ臭さのない、むしろ近代感覚溢れる迫力さえあった。
 描画揮毫された鎌倉という時代の古めかしさがない。剥落部分や紙皺などなければ、現代画家の筆になった新刊画集がと見間違えるだろう。
 画面の人物、ひとり一人の表情にも現代人と相通じる親しさを覚えさせるし、山川草木の筆つかいには古風さが感じられない。ことはそれほどまでに真新しく、活力にみちみちているのである。
 当時としても卓抜した絵師なるが故に、この大作を委嘱されたに違いないが。
 とまれ、七百年余の大昔から、幾多の災禍を潜り抜け、よくぞ「生き延び」永らえ残ったものよ。
 そのことあって、その昔の「至芸の作品」を伝え残され、かく立証され、後代の人間をして納得せしめることができるのである。
『一遍聖』時衆のひとびと
参考:我阿忘『一遍さん釈尊の地をゆく』
http://home.e-catv.ne.jp/abc123/india/india.htm
上田雅一のシネマなページ